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@権利主義の意義
記録の上で確認できる特許は、13世紀に多色模様織物の発明者に対して付与された特許であると言われています。これは、君主がたまたま優れた発明をした者に対して一定期間の独占を認めるという特権を与えただけであって、特許制度という仕組みがあったわけではありませんでした。特許が制度化されたのは15〜16世紀のヴェニスであり、それがイギリスに引き継がれて専売条例という形として結実しました。しかしながら、これらの制度ではいわゆる恩恵主義が色濃く残っていました。
恩恵主義とは真逆の思想である権利主義が出現したのは、18世紀のフランスです。フランス革命の後に中産階級の目線に立った新しい特許法(1979年法)が制定されました。これは、、発明はもともと発明者の財産権であるという思想に基づいています。個人の庭に生えてきた木はその個人のものである、それならば、個人の頭脳に宿ったアイディアもその人のものであろう、と考えられたからです。
→自然権理論とは(特許制度の)
日本においては、例えば“特許出願”(すなわち特許を願い出る)とか、“上申書”とかいうように、特許は国の恩恵という考え方に由来する用語を残していますが、制度面では、完全な権利主義となっています。それは、特許出願の前後(発明をした時から特許出願に対して独占排他権の設定登録がされるまで)で特許を受ける権利を認めていることに現れています。
A特許法における権利主義の現れ
(A)特許を受ける権利を認めていること(特許法第29条第1項)。
(a)特許を受ける権利とは、国家に対して所定の要件を具備する発明について特許権の設定を要求できる権利であるとともに、その設定前にあっては発明の支配を目的とする権利です。
→特許を受ける権利とは
(b)特許出願をした後に各種の手続面での保護(補正など)を特許出願の流れの中で与えるのは当然として、発明をしたときから特許出願をしたときまでも権利面で保護されるというのが特許を受ける権利の保護の意義です。
(c)特許を受ける権利は、財産権として譲渡性があります。恩恵主義から権利主義へ移行する流れの中での多くの先例により、当該権利を財産権として認めるのが妥当と関挙げられるからです。
(d)日本においては明治21年に制定された“専売特許条例”以来、特許を受ける権利を認めています。
(B)特許出願の拒絶査定に対して拒絶査定不服審判の請求を認めていること(特許法第121条第1項)。
特許出願人は、拒絶査定に不服であるときには拒絶査定不服審判の請求が認められています。特許出願に対する拒否を行政機関の裁量にしないためです。
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