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①特許出願人の名義変更の趣旨
(a)産業上利用可能な発明をした者は、特許を受ける権利を有しますが(特許法第29条第1項柱書)、この権利の行使するためには、国に対して独占排他権の付与を求める手続(特許出願)をとることができます。
(b)特許を受ける権利は、財産的な権利であり、他人に対して譲渡(移転)することが可能です(特許法第33条第1項)。
特許出願をする前に特許を受ける権利を譲渡するときには、譲受人が特許出願をしなければ、当該譲渡は第三者対抗要件を生じないとされており(特許法第34条第1項)、必然的に特許出願と同時に譲受の氏名・名称が特許庁に届けられます。
他方、特許出願後に特許を受ける権利が譲渡する場合に、仮に特許出願の手続と無関係に譲渡が可能であると、特許出願の名義人として特許権を受ける者と、実質的に特許を受ける権利を有する者とが一致しないという不都合を生ずることになります。こうした事態を回避するために、特許を受ける権利の承継は、一般承継の場合を除いて、特許庁長官に届けなければ効力を生じないとされています(特許法第34条第4項)。そうした届け出の手続として、特許出願人の名義変更があります。
(d)なお、特許出願後に特許を受ける権利が一般承継されたときには、承継人は、遅滞なくその旨を特許庁長官に届けなければならないとされています(特許法第34条第5項)。
(イ)相続などの一般承継の場合に届出を要件としますと、届出がある迄は実質的に特許出願の名義人が存在しないという不合理な状態が生じます。
(ロ)この事態を避けるために一般承継の場合には届出を効力発生要件としていません。
(ハ)しかしながら、特許法は承継人に遅滞なく長官にその旨を届け出るべき旨を定めており、やはり特許出願人の名義変更が必要であることには代わりがありません。
②特許出願人の名義変更の原因
前述の通り、相続などの一般承継による場合と、譲渡などの特別承継による場合とがあります。
③特許出願人の名義変更の手続
(イ)相続などの一般承継の場合には、「特許出願人の名義変更届(一般承継)」を提出します。
(ロ)譲渡などの特別承継の場合には、特許出願の譲受人が手続をする様式と、特許出願を譲り渡す者が手続をする様式とがあります。
④特許出願人の名義変更の効果
名義変更後の特許出願人に対して特許権が付与されます。
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