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①Jepson claimの意義
Jepson claim(Jepson type claimともいう)とは、一般に特許出願人の発明に最も近い文献を特定するのに必要な事項の全てを前半部(preamble)に記載し、改良点を後半部に記載するタイプのクレームです。
②Jepson claimに対する各国法の対応
(a)米国法の対応
(イ)米国では一応規則[U.S. Rule 75(e)]において特許出願人がこの種のタイプで記載することを奨励しています。
すなわち、“事件(特許出願)の性質が許容するときには、例えば(特許出願が)改良発明に関するものであるときには、いずれの独立クレーム(independent claim)も、従来技術又は公知技術の全ての要素又はステップを含むpreambleと、“whein the improvement comprises”のような句を含むフレーズとからなり、当該フレーズには特許出願人が発明の新しい部分或いは改良点と考える事柄の要素・ステップ・或いは関係が記載されるべきである。”
→preambleとは
(ロ)しかしながら、実際に米国ではJepson claimの形式で記載された特許出願はあまりありません。また米国特許出願の審査において審査官からJepson claimに改めることもまずありません。
(ハ)欧州ではJepson claimは特許出願の請求の範囲に一般的に採用されている様式であり、特に一部の国では特許出願を担当する審査官からJepson claimの形式に補正せよと支持されることもあります。
③Jepson claimの長所
(a)このタイプのクレームは、特許出願人が重要と考える事柄が明確に判るという利点があります。
(b)特許出願の審査をする側からすると、発明の理解が容易であり、特許出願人の側からすると、誤解による、いわゆる”old combination”の拒絶理由を回避できるという利点があります。
④Jepson claimの短所
(a)前段部の解釈により不利益を被るリスク
・米国特許出願の場合に、特許出願人の不手際などにより完全に公知でない事項をpreambleの部分に記載してしまった場合の評価に関しては判例では不確定な要素が残されています。MEPE(日本の進歩性審査基準に相当するもの)では次のように述べています。
“Jepsonクレームが用いられているときにはその前半部の記載は先行技術であると認められているが(590 F.2d 902 In re Ehrreich)、それは前半部の記載が発明者自身のworkでない場合に限られる(748 F.2d 645, 649)。”
・しかしながら、審査官がJepson claimという形式だけを見て、拒絶理由通知を発する可能性はあります。
(b)特許出願をした後により近い先行技術が発見されるリスク。
特許出願に係る発明(A+B+C+D)に関して、特許出願時に先行発明(A+B)しか判明しておらず、これをベースに(前半部分:A+B、後半部分:C+D)というJepson claimを作成した後、当該特許出願の審査において先行技術(A+C)が発見されたときには、対応に困ることがあります。審査官からは要素Cをpreambleに記載するように言われるのですが、そうすると一つの先行技術文献で要素A+B+Cを備えると誤解される余地があるからです。、
⑤Jepson claimの具体例
(a)characterized in形式
X comprising A, B, and C characterized in that it further comprises D.
要件AとBとCとからなるXにおいて、Dを有することを特徴とするX. →claimとは(特許出願の)
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