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①米国の審査基準(MEPE)ではpreambleの記載に関して過去の判例を挙げて次の
“The preamble is not given the effect of a limitation unless it breathes life and meaning into the claim. In order to limit the claim, the preamble must be “essential to point out the invention defined by the claim.” Kropa v. Robie,187 F.2d 150, 152, 88 USPQ 478, 481 (CCPA 1951)”
〔preambleは、クレームに対して活力(life)と意味(meaning)とを与えるものでない限り、限定としての効果を有しない。クレームを限定するためには、クレームされた発明を指定するために本質的でなければならない。〕
②日本の特許出願の実務に関わる者の立場としては、クレームの記載が発明の特定に意味を持たない場合があるという点に奇異な感覚を覚えますが、それは書き方の問題であると考えられます。
(a)米国特許出願の実務では、preambleの記載は特許出願の進歩性などの審査で重要視されないため、できるだけ簡略に記載しようとする傾向があります。それは逆にいうと後半部分(body)だけで実質的に発明を特定できるような書き方になります。
(b)仮想的な事例ですが、特許出願のクレームで“A+BからなるXにおいて、a+bからなるX”という書き方をしたとします。但し、aはAの下位概念、bはBの下位概念です。こういう書き方をすると、日本でも“において”の前の記載は実質的に発明を特定する意味を持たないことになります。Preambleの部分とbodyの部分とを切り離して、同様の内容を前者で抽象的に、後者で具体的に記載すると、preambleが発明を特定する意味合いを持たなくなる可能性があるのです。
③逆にいえば、preambleの記載事項をbodyで引用して、さらに限定するような書き方ですと、preambleの記載事項も発明を特定する意味をもつことになります。
例えば55 F.3d 615, 620(Bell Communications Research Inc. v. Vitalink Communications Corp.,)では、特許出願人(クレーム作成者)がpreambleとbodyとの両方を用いて発明の主題を特定したときには、両方により特定された発明が特許により保護されるものとなる旨を述べています。
これは、bodyにより発明が完全に記載されていれば、preambleにある目的・用途はクレームを制限しないと解釈された事例です。
→preambleとは
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