内容 |
①不利益行為の意義
(a)旧特許法では、例えば複数当事者の相互代表に関して不利益行為以外については各人(例えば特許出願人の一人)が全員を代表することが各人を代表することはない、とされていましたが、その不利益行為の範囲は必ずしも明確ではありませんでした(※1)。代理権の範囲についても同様です。
(b)そこで現行法は、複数当事者の相互代表(特許法第14条)及び代理権の範囲(特許法第9条)において、複数当事者の相互代表或いは代理権が規制される行為を列挙しました。
(c)特許出願等の実務上、これらの行為を“不利益行為”といいます。
(d)この文章では、“いうゆる不利益行為”といいます。単純に“共同の特許出願に関して代表者をしたときには、代表者は不利益行為をすることができる。”という言い方をすると、“代表者は、他の特許出願人の不利益を与えてもよい。”という意味に誤解されないからです。
(e)“不利益行為”という用語は、必ずしもその内容を直観できるものではありません。
・例えば特許出願の請求の範囲中のうちで特許出願人丙にとって重要な請求項を、特許出願人甲が削除したとすれば、当該削除は丙の利益を害します。
・他方、特許出願の拒絶査定に対する不服審判を共同出願人の一人が単独で請求できない理由は、単独請求が他の特許出願人の不利益になるからではありません。拒絶査定を放置しておくと、当該特許出願に対する拒絶査定が確定してしまうからです。
②いわゆる不利益行為の内容
いわゆる不利益行為は次の通りです。
(a)特許出願の変更
特許出願の変更とは、実用新案登録出願或いは意匠登録出願への出願変更をいいます。出願変更により元の特許出願は取下げ擬制されるからです。
(b)特許出願の放棄・取下げ
特許出願の放棄は特許を受ける権利の放棄、特許出願の取下げは特許を受ける権利の撤回であり、いずれにしても当該特許出願が有効ではなくなるからです。
(c)特許権の存続期間の延長登録出願の取下げ
この取下げにより特許権の存続期間の延長ができなくなるからです。
(d)請求・申請・申立の取下げ
(e)国内優先権の主張及びその取下げ
国内優先権の主張をすると主張の基礎となった特許出願等が取り下げ擬制されるから、また国内優先権の主張を取り下げると、優先権の利益が失われるからです。
(f)拒絶査定不服審判の請求
拒絶査定不服審判の請求は、特許出願自体と同格の別個の手続であるため、全員の意思を確認にするために特許出願人全員が請求しなければなりません。共同で特許出願をしたと言っても、出願手続はしても審判請求の是非に関しては別に考えたいという当事者が多いからです。
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