体系 |
外国の特許法・特許制度 |
用語 |
Interferenceとは(特許出願の) |
意味 |
特許出願のinterferenceとは、かつての米国で先発明主義の下で複数の特許出願が同一の発明に対して行われたときに発明が行われた時の先後を審査するために採用されていた手続です。
→First to Invent Systemとは
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内容 |
@米国特許出願におけるinterferenceの意義
(a)2013年まで米国では先発明主義が採用されていました。アメリカの憲法第8条で「発明者のみがその発明や発見についての排他的権利を有する」と定めており、その考え方からすると、同じ発明を着想した者が複数居るときには最初の発明者だけが同条にいう「発明者」と解釈することが自然であると考えられていました。
(b)先発明主義を実現するための手続がinterferenceです。
(c)2013年以降米国は先発明主義からFirst Inventor to File systemという独自の先願主義へ移行し、Interferenceもこれに伴って廃止されました。
→First Inventor to File systemとは
(d)First Inventor to File systemの採用に伴い、いわゆる冒認者による特許出願等を排除するためのDeviationという手続が採用されましたが、これはinterferenceとは別のものです。
A特許出願のinterferenceの種類
(a)特許出願のInterferenceは2種類に大別できます。一つは特許出願同士のinterferenceです。
(b)これは、主として同一のアイディアを思い至った者が相互の存在を全く知らずにほぼ同時期に特許出願し、審査手続に入ったような場合です。
(c)例えば電話機の発明は同日の数時間違いで2名の発明者がそれぞれ特許出願をしたと言われています。
(d)もう一つは、甲の特許出願が許可となって特許公報が出され、これを見た他人乙が自分こそ最初の発明者であるとして特許出願をした場合であり、権利者甲と特許出願人乙との間のinterferenceとなります。
(e)なお、特許同士の間のinterferenceであり、これは米国特許商標庁の管轄ではないので、ここでは取り扱いません。
B特許出願のinterferenceで先発明者と認定される要件
(a)Interferenceは発明の時点の前後を審査するものですが、具体的に発明の時点とはどう判断するのでしょうか。
(b)発明の着想(例えば電球の発明において透明な球体の内部に形成した真空中でフィラメントに通電する)を得てから、実際に実用に耐える程度の実施例(フィラメントの素材など)を実現するまで相当期間の試行錯誤を必要とする場合があります。
(c)そこでinterferenceでは、先発明者の要件として、最初に発明を着想(conception)し、
誠実な努力の継続(reasonable diligence)により、 発明を実施化(reduction to practice)した者であること、が要求されました。
(d)例えば特許出願人AとBとの間でinterferenceが行われる場合において、AがBより先に発明を着想し、AがBより後に実施化したとしても、着想後も誠実な努力を継続していたときには、先の発明者となる可能性がありました(参考図参照)。
(e)このため、先発明主義の下では、研究者は、研究ノートを付けて、アイディアを着想した日時、実施例を完成した日時、その間にどういう研究を行ったかなどを記録しておく必要がありました。
C特許出願のinterferenceの手続
(a)Interferenceが宣言されるためには、審査官が対比する特許出願のクレームに記載された特許可能な発明が相互に抵触していると認定することが必要です。特許可能でなければ双方の特許出願を拒絶すれば足りるからです。
(b)Interferenceが宣言されると、特許出願の管轄は審査官から審判部へ移ります。
(c)宣言の後は、予備的モーションおよび準備書面の提出→証言採取とbriefsの提出→最終ヒアリング→最終決定という順序で手続が進みます。
D特許出願のinterferenceの問題点
Interferenceは相当に時間がかかるものであり、その結果、特許出願の日から長期間を経てから特許が成立し、法的安定が害されるなどの弊害が指摘されていました。
→特許出願のinterferenceのケーススタディ
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留意点 |
上述の「実施化」は、発明の実施例などを整えるという意味であり、日本の特許法にいう発明の実施とは別の意味です。
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