内容 |
①特許出願のBest Mode要件の意義
この要件は、特許出願人が保護を申請する発明に関して特許出願人が知っている最良の実施形態を明細書中に開示することをです。
特許制度が発明を開示した代償として保護(patent)を付与する以上、特許出願人が十分な開示をすることなくpatentを取得することを防止することが必要であるという趣旨です。例えば熱電球の発明は、透明球の内部の真空中としてフィラメントを通電するというアイディアですが、フィラメントの材料選びに試行錯誤をして発明の完成に至ったそうです。仮にそうした発明の骨子の部分を隠してpatentを得ることが可能であるとすれば、公開された発明を基礎として新しい技術革新をしようとする研究者にとっては特許出願人が隠している部分を探し当てることから研究をスタートしなければなりません。米国特許法は、こうしたことを回避するためにBest
Mode要件を要求しています。
②特許出願のBest Mode要件の内容
特許出願人が知っている範囲でBest
Modeを開示すればたります。
③特許出願のBest Mode要件の取り扱い
Best
Mode要件に反することは特許無効の理由となります。
もっともBest
Mode要件を特許侵害の抗弁事由とすることは2011年の法律改正によりできなくなりました。ディスカバリー手続によりBest
Mode要件かどうかを示す内部資料の一切合切を提出させることで訴訟費用が高額となるという問題を生じていたからです。
④外国特許出願との関係
Best
Mode要件は、アメリカ固有のものです。例えば日本の特許出願の明細書中には“発明の実施形態”の欄がありますが、最良の実施形態を記載することは必須の要件ではありません。仮に最良の実施形態を隠した場合には、その態様に対して後日他人が特許出願をした場合に特許が取れてしまう可能性があるので、そうしたことはしないだろうと考えられているのです。
従って日本の特許出願に基づいてパリ条約優先権を主張して米国特許出願をする場合には、明細書の実施形態が最良の形態であるかどうかを発明者によく確認しておく必要があります。
|