内容 |
@性能試験標準の意義
(a)性能試験標準とは、製品の性能を検証するための試験方法を対象とした技術標準です。
(b)例えば高機能素材の分野で、素材の組成・製造方法は開示しないで(特許出願もしないでノウハウとして秘密とする)、その素材の性能を評価できる試験方法を標準化することが考えられます。これにより他社の模倣品と差別化ができ、粗悪な製品は市場から排除されるので、自社の優位性を高めることができます。
(c)性能試験標準は企業のオープン&クローズ戦略と密接な関連があります。オープンした技術を他者が採用し易い環境を整えるためには、当該技術が標準化されていることが好ましいからです。
A性能試験標準の具体例
(a)例えば電気掃除機の吸引力・集塵性能に関しては、国際電気標準会議(IEC)が性能試験の規格を定めています。
(b)その要旨は、次の通りです。
・指定されたクリーニングサイクル中に除去される塵埃が、試験範囲上に散布された塵埃の全体量の何パーセントにあたるかを表すこと。
・この試験は硬い床(フローリング)、硬い床の溝(一般的なフローリングに見られる、板と板の間の溝)とカーペットで行うこと。
・試験は2回又は3回(床面によって異なる)実施して平均値を得ること。
(c)こうした性能試験の標準化により、各掃除機メーカーの性能を客観的に比較できるようになります。
B性能試験標準と特許の活用及び取得(特許出願)との係わり
特許出願人は、請求の範囲に記載の技術的要素(発明特定事項)に関して、その物の構造に代えて、物の性能・機能で発明を特定することができます。しかしながら、特定の分野では、その性能や機能がどういう試験方法で評価したのかを説明しなければ、実質的に発明を特定できない場合があります。そうした場合に、そうした試験方法が特定の性能試験標準に適合している場合には、特許出願当初の明細書で当該標準を明記しておくことが奨励されます。特許出願の後で明細書の補正により追加しようとしても新規事項になる可能性があるからです。発明の不明確性を解消できないときには特許出願が拒絶される可能性があります。
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