体系 |
実体法 |
用語 |
技術の具体的適用に伴う設計変更のケーススタディ1(設計様式の変更) |
意味 |
進歩性審査基準には、技術の具体的適用に伴う設計変更は、当業者の通常の創作能力の発揮であり、これが特許出願の発明と先行技術との唯一の相違点であるときには、他に進歩性を推認できる特別の事情がない限り、創作容易であると判断する旨が記載されています。ここでは国内の事案から、技術の具体的適用に伴う設計変更の事例を紹介します。
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内容 |
①事例1
[事件番号] 平成14年(行ケ)第460号
[発明の名称] エアマッサージ機
[主要論点] ○○の技術を主引用文献に適用するとすれば、その適用場所は△△か□□しかない、その一つを選択するのは当業者にとって容易である、という判断により、進歩性が否定された事例。
[事件の種類] 審決取消請求事件
[発明の名称] エアマッサージ機
[発明の内容]
椅子前面の凹部に膝下の脚部を入れて押圧するマーサージチェアーにおいて、凹部底に押し付けるように押圧点を選ぶもの。
[技術の具体的適用の内容]
押し付ける方向に太腿を逃がさないようにその両側の中心を一対の指圧頭で挟む指圧型マッサージ手段を、上述のマーサージチェアーに適用する場合において、凹部底に押し付けるように押圧点を選ぶこと。
[裁判所の判断] 進歩性の判断は、原則として客観的な構成により判断されるべきであり、
2つの発明の構成を組み合わせることで容易に想到し得る発明は、たとえ引用文献の組み合わせにより一定の思想に到達し得ない場合であっても、容易に想到し得ると認められる。
∵ある構成により特別な課題を解決しようとすることは発明者の主観的な意図に過ぎず、その意図の存在を以て特許性を肯定すれば、客観的に同じ構成の特許を複数認める結果を招来しかねない。
凹部底に脚部を押し付ける様に押圧する思想が引用文献に無くても、
両側から脚部を押圧する場所には脚部の中心点・前側・後側の3通りの選択しかないから、凹部底に押し付けるように押圧点を選ぶことは容易である。
〔コメント〕
従来技術をある公知の発明に適用するに際して適用態様には有限の候補しかないから、その一つを選択するのは容易であるという論法はしばしば散見されます。
しかしながら、その適用対象の候補(本事例では押圧箇所には脚部の中心点・前側・後側の3通り)の選び方に判断者の後知恵(いわゆるハインドサイト)が紛れ込む可能性があります。
特許出願の拒絶理由通知でこうした有限の候補の一つを選ぶことは容易という拒絶理由に接した場合、その候補の選び方は先行技術文献のどこから導かれたのかを問うのが特許出願人の対処法の一つとなります。
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留意点 |
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