内容 |
@事例1
[事件番号]
平成26年(行ケ)第10158号(拒絶査定不服審決取消請求事件)
[判決言い渡し日]
平成27年7月16日
[発明の名称]
可食用酸及び/又はその酸性塩を含む薬剤組成物と用途
[事件の経緯]
(a)本件特許出願は、いわゆる国際特許出願出願であり、請求項1〜16を含む状態で拒絶査定を受けた。
(b)当該特許出願の特許管理人Cは,平成23年12月26日において,本件審判請求書とともに,本件書面1(【書類名】」欄に「手続補正書」と、「【提出日】」欄に「平成22年12月 日」と記載された書面)を含む書類を提出した。
(c)審判請求書の【提出物件の目録】欄には、【物件名】として、「1・手続補正書…」と記載されている。
(d)審判請求書の「4・むすび」には,「したがって,本願発明は引用文献1〜10に記載された発明の内容に関係とあった所を皆上記した様に,手続補正をし,請求項を2つにまとめ,よって原査定を取り消す,この出願の発明はこれを特許すべきものとする,との審決をもとめる.」との記載がある。
[特許庁による取り扱い]
(a)窓口担当者による本件審判請求書の受付手続から本件電子化に至る一連の過程において,本件審判請求書について、審判請求書に対して「【提出物件の目録】欄の「1枚」の記載を「1」に訂正するなどの職権訂正が行われ,また,「@同時提出の手続補正書無し」の押印がされた。
(b)そして特許庁は,上記請求を不服2011−28347号事件として審理を行い,平成26年2月10日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をした。
「原告(特許出願人)の主張」
(a)被告(特許庁)は,本件審判請求書の添付書類の一つとして、「【提出物件の目録】」欄記載の「1・手続補正書」に対応するものとして「【書類名】」を「手続補正書」とする本件書面1が提出されたが,本件書面1は,審判請求書の添付書類であって,独立した書類ではないから,正式な手続補正書に該当しない旨主張する。
(b)しかし、特許庁作成の「審判の概要(手続編)」には,審判請求書と同時に手続補正書を提出する場合の手続について,「特許庁窓口差出」の場合には、…審判請求書の「【提出物件の目録】」欄に「手続補正書」を記載してはならないなどの記載はなく,他に特許庁が「審判請求書と同時に提出される手続補正書」の「独立性」を判断するための基準を外部に公表していることを示す証拠はない。
(c)外部には公表されていない「手続補正書の独立性」の基準を適用して、軽微な瑕疵をもって、審判請求書と同時に現実に提出された「手続補正書」の法的有効性を否定することは、特許出願人の利益を著しく損なうものであるから、失当である。
[事件の経緯に対する裁判所の判断]
(a)審判請求書の結びの欄に「手続補正をし,請求項を2つにまとめ,よって原査定を取り消す」と記載されているから、本願の特許請求の範囲が平成20年10月10日付け手続補正による補正後の請求項1ないし16から本件書面1記載の請求項1及び2に補正されたことを前提としたものであることは明らかである。
(b)また本件においては,拒絶査定不服審判請求書の「【提出物件の目録】」欄に,拒絶査定不服審判請求と同時にする「手続補正書」を記載してはならないことを定めた法令が存在することや特許庁がそのような運用基準を定めて公表していることについての主張立証はない。
(c)これらの事情によれば、本件書面1は、本件審判請求書と同時に特許庁に提出された、本願の特許請求の範囲の補正を内容とする手続補正書であるから、特許法17条の2第1項4号に基づく補正に係る手続補正書に該当するものと認められる。
(d)そうすると当該手続補正前の特許請求の範囲に基づく審決は取り消さざるを得ない。
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