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 パテントに関する専門用語
  

 No:  710   

新規性進歩性審査基準/特許出願の要件/発明の要旨・ケース(原則)2

 
体系 実体法
用語

発明の要旨のケーススタディ(原則的事例2)

意味  特許出願の発明の要旨とは、特許請求の範囲の記載の通りに解釈するべきであり、技術的意義が明確でない限り実施例の内容に限定解釈することはできない、ということが基本的な考え方ですが、ここでは「技術的な意義が明確でない」ということを掘り下げるために新規性・進歩性審査基準で引用された事例を紹介します。


内容 〔事件番号〕平成4年(行ケ)第116号

〔事件の種類〕審決取消請求事件

〔発明の名称〕銅合金の製造方法

〔発明の構成(特許請求の範囲)〕
「加工された中間体で0.05%から0.5%のベリリウム及び0.05%から0.5%のコバルトを含有し、残部実質的に銅からなる合金を準備し、析出硬化に寄与する合金成分の再結晶化及び固溶体化を生じさせるために十分な時間前記合金を1450°F(790℃)ないし1850°F(1000℃)で溶体化処理して、該溶体化処理された合金を室温まで急速に急冷し、面積において少なくとも70%の縮減に前記溶体化処理された合金を最終冷間加工し、析出を生じさせるため1時間から8時間以下の時間温度600°F(315℃)ないし1000°F(540℃)の範囲で前記冷間加工された合金を時効して銅ベリリウム合金を製造するようにしたことを特徴とする銅合金の製造方法」

〔発明の目的〕
 「高い成形性と展性、高い伝導率と有効な強度を伴う工業的に最も強い銅・ベリリウム合金の応力緩和抵抗に限りなく近い応力緩和抵抗を有する時効硬化可能な銅・ベリリウム合金を生産する方法を提供すること」

〔裁判所の判断〕
(イ)本願発明の要旨中のうち、「合金成分」は、「析出硬化に寄与する合金成分」であればよく、「合金成分の一部」と解すべき理由はなく、「十分な時間」については「約15分間」と限定する理由もない。

(ロ)引用例には本願発明と合金の組成範囲で重複し、熱処理及び冷間加工、時効処理という一連の方法により合金を製造する方法が記載されているから、その製造された合金は、当然特性においても重複するはずである。

(ハ)したがって本願発明の作用効果は引用例のものから当然予期されるとした審決の認定判断に誤りはなく、本願発明は引用例から当業者が容易に発明できたとした審決の取消しを求める請求は失当である。

(ニ)発明の要旨の認定、すなわち特許請求の範囲に記載された技術的事項の確定は、まず特許請求の範囲の記載に基づくべきであり、その記載が一義的に明確であり、その記載により発明の内容を的確に理解できる場合には、発明の詳細な説明に記載された事項を加えて発明の要旨を認定することは許されず、特許請求の範囲の記載文言自体から直ちにその技術的意味を確定するのに十分といえないときにはじめて詳細な説明中の記載を参酌できるにすぎないと解される。

[コメント]
“十分な時間”などの文言は、それ自体が「技術的な意義が不明確」と言えなくもないですが、それだけで特許出願人が実施例を参酌する根拠としては不十分です。請求の範囲全体として見て技術的な意義が不明確と言えるかどうかの問題だからです。


留意点

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