体系 |
外国の特許法・特許制度 |
用語 |
特許出願を誠実に遂行する義務(Duty of Candor and Good faith)とは(米国) |
意味 |
(米国における)特許出願を誠実に遂行する義務とは、特許出願をしようとする全ての者は、自ら知っている情報であって、特許出願審査にとって重要である情報を特許庁に対して開示する義務を含めて、特許庁に対して誠実にあるべきという義務です。
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内容 |
@特許出願の誠実遂行義務の意義
(a)米国では、判例法上、出願人は誠実義務(duty of candor and good
faith)を負うとされており、その具体化として1977年に特許規則において定められた情報開示義務規定があります。
(b)同規則CFR1.56(a) では、「(a)全ての当該個人は、自ら知っている情報であって、特許出願審査にとって重要である情報を、特許庁に対し開示する義務を含む、特許庁に対する誠実義務を負う。」と規定されました。
“全ての個人”としているのは、この当時、特許出願を行うことは個人の権利だったからです。 →特許出願人の要件とは(米国)
(c)「特許出願審査にとって重要である情報」とは、新規性や進歩性の審査に役立つ情報をいいます。
特許出願の発明に最も近い先行技術は開示したので、直近の技術ではないのでこの文献は開示する必要はないだろう、などと特許出願人が勝手に判断することは危険です。
先行技術文献同士の組み合わせにより進歩性を否定できる場合もあり、後述の如く、必要な情報を出さなかったことを、訴訟相手が攻撃対象とする可能性があるからです。
A特許出願の誠実遂行義務の内容
(a)特許出願の審査段階においては、この義務が導入された当初は、開示義務違反についての審査や、義務違反による特許権の取消しを行ってきたが、その判断に長時間を要する等の弊害が顕在化したため、1988年には審査段階での判断は廃止されました。
(b)他方、裁判の段階においては、特許権の侵害を主張した場合、先行技術開示の義務違反があった場合は、相手側から不公正行為(inequitable
conduct)により特許権の行使が不能であるとの抗弁が可能となります。
→特許出願人等の情報開示義務とは(米国)
(c)特に米国において、ディスカバリー制度により、この点の証拠収集が容易になっていますので注意が必要です。 →ディスカバリーとは
(d)特許出願の誠実遂行義務は、特許出願をする時点のみに発生する義務でなく、特許出願が米国特許商標庁に係属している間は存在しています。従って特許出願の手続をした後に知り得た情報も提供しなければなりません。
(e)米国特許出願と同じ発明を外国で特許出願して、対応する外国特許出願の審査で引用された先行技術も米国特許商標庁に提出する義務があります。この義務を徹底できるように外国特許出願の代理人を含めて、協力体制を作る必要があります。
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留意点 |
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