No: |
717 特許出願のサポート要件/特許・明細書/ |
体系 |
特許申請及びこれに付随する手続 |
用語 |
特許出願の実施可能要件 |
意義 |
特許出願の実施可能要件とは、経済産業省令の定めるところにより、特許を受けようとする発明の属する分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明に記載しなければならないという要件をいいます(特許法第36条第4項第1号)。
|
内容 |
①特許出願の実施可能要件の意義
特許権は、特許出願人が開示した新規な発明を公開する代償として付与されるものであり、発明の公開により、発明の利用(文献的な利用だけでなく、産業界における実施による利用)を図るのが制度の趣旨です。従って、実施ができる程度に発明が開示されていなければ、特許出願人に権利を付与する意味がありません。
そこで実施ができる程度に明確かつ十分に発明を開示することを、特許出願人に要求することとしています。
②特許出願の実施可能要件の内容
(a)特許出願人が特許を受けようとする発明を発明の詳細な説明に記載しなければならず、その際には次の点を考慮して実施可能要件を満たさなければなりません。
(イ)実施の主体
通常の創作能力を発揮できる者(当業者)を対象とします。
通常は当業者が産業活動における実施の担い手となるからです。 →実施可能要件の当業者とは(特許出願の)
(ロ)実施の対象
特許出願人が請求項に記載した発明が対象となります。
請求項に記載された発明に対して特許権が付与されるからです。
(ハ)実施の手段
その発明の属する技術分野において研究開発(文献解析,実験,分析,製造等を含む)のための通常の技術的手段を用いて、実施ができるかどうかが問題となります。
新規な発明を実施する場合に、基礎的な別の技術(例えば製造装置・パソコンなど)を使用することを前提とすることがあります。
そうした技術が通常の手段であるときには、当業者がそれを使用できることを前提として、発明を記載すれば足ります。これに対して、例えば同一人が基本的発明Aを特許出願し、次にAの利用する関連発明Bを特許出願するような場合には、後願の明細書には、Bの実施に必要な発明Aの説明も記載することが必要になる場合があります。
(ニ)実施の前提
いわゆる当業者が明細書及び図面に記載した事項と特許出願時の技術常識とに基づき,請求項に係る発明を実施することができる程度に発明を記載することを特許出願人は要求されます。
米国特許出願の事例ですが、明細書中に記載された「分子量」という用語の意味が特許出願の出願書類及び技術常識から正しく読み取れるか否かが争いになった例があります。
技術常識を参酌しても疑義を生ずる可能性があるときには、特許出願人が予め明細書に記載しておくことが重要です。
→特許出願の実施可能要件違反の類型
|
留意点 |
|
次ページ
※ 不明な点、分かりづらい点がございましたら、遠慮なくお問い合わせください。 |
|