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737 均等論と禁反言1/特許出願(外国) |
体系 |
外国の特許法・特許制度 |
用語 |
Doctrine of Equivalents(均等論)とEspettol(禁反言)のケーススタディ1 |
意味 |
均等論(特許発明と均等の発明に特許権の保護を認める概念)と対となる考え方として、ファイルラッパー・エスペットル(包袋禁反言)があります。これは、特許出願の経緯等で表された発明者(特許出願人)の意思表示と矛盾する権利の主張を許さないという考え方です。ここでは均等論に対する包袋禁反言の反論が米国裁判史上に現れた初期の段階より、両者の関係をケーススタディします。
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内容 |
@事例1−イクジビット・サプライ事件〔315 F. US 126 (1942)〕
Exhibit Supply. Co et al., v. Ace Patents Corp,.
〔特許の対象〕
ピンボールマシーンに使われるスイッチに関する発明であって、ピンボールが当たると電流を遮断するもの。
〔均等論の対象となった要件〕 テーブルに埋没された導電体
〔被疑製品の対応部分〕 テーブル上の金属プレートによって支持された導電体
〔特許出願の経緯〕
発明者(特許出願人)が拒絶理由を回避するために、意見書においても「保持され」と「埋没され」との相違を強調して主張していた。
〔均等論の成否〕
前記特許出願の経緯から、「保持」と「埋没」相違に関するすべての構造については特許権として放棄しているとみなすことが妥当であると判断して、均等論の適用を否定した。
〔コメント〕
特許出願の経緯に基づく禁反言(ファイルラッパー・エスペットル)の主張が裁判所で認められるに至る契機となった事件と言われている。
A事例2−ヒューズ・エアクラフト事件〔717 F. 2d 1351(1983)〕 Hughes Aircraft Co. v.
United States.
〔特許の対象〕
人工衛星の発明であって、人工衛星の運転状況に関する情報を地上基地に発信し、運転状況に関する情報を基に地上基地で制御信号を生成し、地上基地から人工衛星のジェットを点火させ、人工衛星の運動方向を制御するもの。
〔均等論の対象となった要件〕 地上基地で制御信号を生成すること。
〔被疑製品の対応部分〕 人工衛星内部のコンピュータによって制御信号を生成すること。
〔特許出願の経緯〕 特許出願の審査の過程でクレームの補正を行っていた。
〔均等論の成否〕
第1審では、制御信号が人工衛星内部で生成されるため文言上の侵害は成立しないこと、また中間処理の過程で補正を行っていることにより禁反言が働き、均等論が適用されないとの判決が下された。しかしながら、連邦巡回裁判所は、第一審の判決を覆して、均等論の適用を認めた。均等論は、補正の性質や目的によって広い範囲から狭い範囲まで均等の範囲を柔軟に変動するものであり、特許出願人が補正を行ったからといって、画一的に均等論を排除するのは不当であるからである。
〔コメント〕
均等論の範囲を柔軟に判断しようとする考え方は後にフレキシブル・バーと呼ばれますが、この判決の直後の他の判決で提唱されたコンプリート・バーを対立する考え方であり、均等論を巡る大きな論点となりました。
→均等論と禁反言のケーススタディ2
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