内容 |
①事例3-キンゼンボウ事件〔741 F. 2d 383,(1984)〕
Kinzenbaw v. Deere & Co,.
〔特許の対象〕 地面に溝を掘り、そこに種を植える装置(今日でいうトラクター)であって、溝の深さを調整する機能を有するもの。
〔均等論の対象となった要件〕 “土を掘る円盤の半径よりも、溝の深さを調整する計測ホイールの半径が大きい”こと
〔被疑製品の対応部分〕 土を掘る円盤の半径の方が計測ホイールよりも大きかった。
〔特許出願の経緯〕
「土を掘る円盤の半径よりも、溝の深さを調整する計測ホイールの半径が大きい」という限定は、特許出願人が先行文献に基づく拒絶理由を回避するために補正によって追加したものであった。
〔均等論の成否〕
特許出願人が減縮補正を行っていたとき、禁反言が生じるので、均等論のよるクレームの拡大解釈は一切認められないと判断されました。
〔コメント〕
これは後にコンプリートバーと言われる考え方です。特許出願された発明が補正を経ずに特許になることは稀ですので、「一切」の言葉を厳格に解釈すると、均等論はほとんど認められないということになりかねず、米国特許出願の実務家に対して大きな衝撃を与えました。
本判決以後により、均等論に対する禁反言の適用の在り方として、特許権者側がフレキシブル・バーを、相手側がコンプリートバーをそれぞれ主張するというややこしい状態が続きましたが、次のワーナー・ジェンキンソン事件を経て均等論及び禁反言を巡る解釈はさらに収束に向かいます。
→均等論と禁反言のケーススタディ3
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