パテントに関する専門用語
  

 No:  741   

範囲に関する予期性/特許出願の要件(外国)/発明の新規性/進歩性

 
体系 実体法
用語

範囲に関する予期性(Anticipation)

意味  予期性とは、米国特許出願の実務で用いられる概念であり、、既に公開された発明(又は先願発明)と同一であることと同義です。ここでは範囲(range)に関する予期性に関して解説します。


内容 ①特許出願人により請求項中にクレームされた範囲(range)に先行技術が開示する範囲がそっくり含まれる場合には、予期性が成立します。

(a)特許出願人が請求項中に範囲やこれに類するものを挙げて幾つかの成分をカバーしようとするとき、それら成分の一つが先行技術に存在するときには、予期性が成立します。
778 F.2d 775 Titanium Metals Corp. v. Banner

②先行技術が開示するの範囲が、特許出願人によりクレームされた範囲とオーバーラップし、或いは接する(touching)するときには、先行技術が十分な特殊性(sufficient specificity)を以て特許出願人によりクレームされた範囲を開示するときには、予期性が成立します。

(a)先行技術が特許出願人によりクレームされた範囲とオーバーラップし、或いは接する範囲を開示しているが、特定の具体例がクレームされた範囲に存在しないときには、ケースバイケースで予期性を判断します。

(b)クレームが予期されるためには、特許出願人によりクレームされた主題が先行技術に開示されてなければなりません。当該開示は、法定の予期性を構成するに足りる十分な特殊性を伴う必要があります。

(c)何が十分な特殊性を構成するのかは、事情によります(fact-dependent)。

(d)仮に特許出願人によりクレームされた範囲が狭く、かつ、先行技術が開示する範囲が広いときには、その範囲以外の事柄を考慮して、予期性を確立すめの十分な特殊性が存在したか否かを判断するべきです。例えば“50ppmのアルカリ度に水を浄化する方法”というクレームに対して、“150ppmのアルカリ度に水を浄化する方法”という先行技術が存在したとき、実質的な相違が存在しないとした事例があります。
668 F.3d 1340 Compare CleaValu Inc. v. Pearl River Polymers Inc.

 他方、ジフルオロメタンの合成(Synthesis of Difluoromethane)という発明に関して、特許出願人によりクレームされた温度範囲(330~450℃)は、先行技術が教示する100~500℃という温度範囲によっては開示していないと判断された事例もあります。
 441 F.3d 991,999 Atofina v. Grat Lakes Chem. Corp

③先行技術が開示する数値或いは範囲が、特許出願人によりクレームされた範囲と非常に近いが、オーバーラップしておらず、接してもいないときには、特許出願人によりクレームされた範囲は先行技術から予期できません。

(a)すなわち、米国特許法第102条の“予期性”という概念は、(一つの)文献が、特許出願人によりクレームされた事柄を正確に(exactly)開示している場合に適用されるものだからです。
778 F.2d 775 Titanium Metals Corp. v. Banner

(b)従って前述のような場合には、非自明性(進歩性)の問題として特許出願の発明の特許性を検討します。


留意点

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