内容 |
@経験則の意義
(a)要件事実論では、法律の要件に経験則等から間接的に証明し得る事実を“間接事実”と呼んでいます。
(b)経験則は、高度で専門的なものに限定されず、常識的な事柄(後述の事例1参照)も含みます。
A経験則の内容
経験則には、自然法則の如くほぼ絶対的な確実性があるもの、高い蓋然性があるもの、そういう傾向があるという程度のものまでさまざまな程度があります。
従って後述の事例2の如く、間接事実として認められるものの、それとは反対の結論に裁判官が至ることもあります。
B具体例〔容易に発明できたものでないこと(特許出願の進歩性)に関する間接事実〕
〔事例1〕…共同発明者であることの間接事実
事件番号 平成19年(ワ)第32793号
“(特許出願前の)経過からすれば,本件発明1の完成に関わる最も重要な資料は(試作品の完成等に言及した)報告書であるところ,同報告書の報告者が原告ら4名とされているという事実は,本件特許1の特許公報に原告ら4名が発明者として記載されている事実などとともに,原告ら4名が本件発明1の共同発明者であることをうかがわせる一つの間接事実ということができる。”
〔事例2〕…進歩性があることの間接事実
事件番号 平12(行ケ)141号「排ガス処理方法及び排ガス処理装置」事件
“原告は、本件発明1及び2が、商業的に成功していることは、その進歩性を裏付けるものである、と主張する。
しかしながら、一般的に、ある発明の商業的な成功は、その進歩性だけではなく、商品化のための技術力や資金、営業宣伝活動、納期、販売価格等の種々の要素が総合的に関係するものであるから、ある発明が商業的に成功したことは、その進歩性を推認する間接事実のひとつとなりうるとはいえても、それだけでは、発明の進歩性を肯定することはできないというべきである。”
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