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 パテントに関する専門用語
  

 No:  815   

立証責任/特許出願/進歩性/特許侵害

 
体系 実体法
用語

立証責任の分配

意味  立証責任とは、裁判をするにあたって裁判官がある事実の有無について確信を持てないときに、その事実の有無を前提とする法律効果の発生又は不発生により当事者の一方が被る不利益のことをいい、

 立証責任の分配とは、どちらの当事者に不利益を負わせるかの定めをいいます。


内容 @立証責任の分配の意義

(a)特許出願の審決取消訴訟や特許侵害訴訟を含めてあらゆる裁判は、証拠に基づいて事実関係(要件事実)の審理が行われます。

(b)しかしながら、裁判所に提出された証拠をいくら精査しても裁判官が事実関係に関して確信を持つことができない場合があるため、裁判所では、最初から要件事実が立証されないときに一定のルールに従って不利な判決を受ける側の当事者を決めています。
立証責任とは

(c)こうしたルールが立証責任の分配の原則といいます。このルールの通説として法律要件分類説があります。

(d)「立証責任の分配」の基本的法則については、法律の定めがないことが多いため、法規の解釈によって立証責任が明らかにする必要があります。

(e)一般的には裁判所に対して何等かの法律的利益を要求する側に立証責任が課される場合が多いのですが、必ずしもこれに限定されるものではありません。

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A立証責任の分配の内容

(a)例えば特許無効審判における立証責任の分配に関しては、通説では、特許法第123条第1項各号は、無効事由を限定的に列挙したものに過ぎないので、無効審判の規定から一律に立証責任を決定するべきではなく、個々の無効事由の根拠となった規定の性質により、立証責任の分配を考慮するべきであります。

(b)例えば特許出願の要件中の進歩性の規定に関しては、この規定が権利(特許権)発生に対する障害要件を規定することを理由として、審決取消訴訟においては無効審判を請求した側に立証責任があると解されています。
→障害要件とは

 しかしながら、特許出願前に公知の事実を組み合わせることを妨げる事情(阻害要因)があったとか、組み合わせることにより顕著な発明の効果を生ずるということは、容易想到性(進歩性を有しない)の評価を阻害する事情(→評価阻害事実とは)ですので、審決取消訴訟においては無効審判を請求された側に立証責任があると解釈されます。

 顕著な発明の効果があるのであればそれを一番良く知っているのは特許出願人である筈であり、特許権者側が特別顕著な効果を主張するだけで、相手方の反証(顕著な発明の効果がないことの証明)がない限り、進歩性の無効理由を免れることになるのは不合理だからです。

(c)他方、実施可能要件を根拠とする無効審判においては、特許法第36条第4項が特許付与についての権利発生要件を規定していることを理由に、特許権者(被請求人)に立証責任があるとされています。

(d)特許請求の範囲の記載要件(特許法第36条第6項の)記載についても同様です。

(e)冒認出願であることの事実に関する立証責任に関しては諸説ありますが、「特許出願がその特許に係る発明の発明者自身又は発明者から特許を受ける権利を承継した者によりされたこと」を、特許出願人ないし承継人である特許権者において主張立証しなければならないと裁判所が判断した事例があります(平成20年(行ケ)第10427号〜第10429号)。
→立証責任のケーススタディ1(冒認者による特許出願である事実の)

(e)特許法第29条の2(拡大された先願の規定)のように本文と但し書きとからなる規定の場合には、本文の事実と但し書きに規定する事実とで立証責任の分配が異なる場合があります。
立証責任とは(但書きの事実の)


留意点

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