内容 |
@容易想到性(進歩性を有しないこと)の評価根拠事実の意義
(a)進歩性の規定のうちで「容易に」の要件は、一般に規範的要件と言われ、判断者の個人的な価値観に左右されず、客観的に評価する必要があります。
(b)特許出願の発明を一見したときの印象で進歩性を判断するのは、事後分析的思考(いわゆる後知恵)に陥り易く、その特許出願の発明者が特許出願前に知り得た情報の中から容易想到性(進歩性がないこと)を肯定的に評価できる事情及び肯定的に評価することを妨げる事情を拾い出し、総合的に検討する必要があります。
(c)前者を評価根拠事実といい、後者を評価阻害事実といいます。ここでは後者を説明します。
A評価阻害事実の内容
(a)評価阻害事実は、要件事実論での抗弁事実に類似する考え方です。
(b)特許出願の進歩性の場合には、引用発明と比較した有利な効果、及び阻害要因があります。
(イ)引用発明と比較した有利な効果
引用発明と比較した有利な効果が特許出願の明細書等の記載から明確に把握される場合には、進歩性の存在を肯定的に推認するのに役立つ事実として、これを参酌します。
引用発明と比較した有利な効果とは、発明を特定するための事項によって奏される効果(特有の効果)のうち、引用発明の効果と比較して有利なものをいいます。
(ロ)阻害要因
刊行物中に特許出願の請求項に係る発明に容易に想到することを妨げるほどの記載があれば、引用発明としての適格性を欠くと判断されます。
例えば技術文献は、一定の用途へのある技術の適用の可能性を論ずるときに、“理論上の可能性はあるが、現時点では○○の問題があり、現実的ではない。”というような書き方をしている場合があります。
当業者がそれをみて当該技術の採用を躊躇するような記載は阻害要因となります。
特許出願人(或は発明者)がある条件を付ければその問題を避けられると気づいて発明に至ったとき、その気づきが発明の重要な要素であり、進歩性を肯定する材料になります。
|