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寄与率とは(特許侵害における) |
意味 |
特許侵害における寄与率とは、特許の対象である発明が製品の価値に対して貢献した程度を示す割合をいいます。
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内容 |
@寄与率の意義
(a)特許出願人が保護を求める発明は、所定の特許要件(新規性・進歩性等)が具備されることを条件として特許となり、当該発明を権利客体として財産権である特許権が成立します。従って他の財産権と同様に特許侵害をする者に対して損害賠償権を行使できます。
(b)また損害賠償権を請求する特許権者や専用実施権者の立証責任を軽減するために、少なくとも実施料相当額を損賠賠償額として請求できるという賠償額算定の特則が設けられています(特許法第102条)。
(c)しかしながら、発明は無体物であるアイディアであり、一つの製品に対して複数のアイディアが組み込まれて製品としての価値が成り立っている場合があります。
(d)また技術的に観点以外にも、事業者の信用であるとか、広告的な要素が製品の価値を高めている場合もあります。
(e)実際の物である製品の価値に特許侵害の価値がどの程度寄与しているのかを表す指標が寄与率です。
A寄与率の内容
(a)特許侵害における寄与率は、主に係争物の一部を発明品である場合に発明の貢献度に応じて損害額を下げるために用いられる概念です。
(b)例えば侵害者が1千個の模倣品を売却し、特許権者は1製品あたり、1000円の限界利益を得ていたことを立証できた場合、特許権者が、1千個の製品を生産することができたのであれば、特許権者の受けた損害額は1千円×1000円=100万円ということになります。
(c)しかしながら寄与率が50%であれば、100万円×0.2=50万円という如く、その寄与率の割合に応じてそこから減額されることとなります。
→寄与率のケーススタディ1
(d)特許出願人が特許を受けようとする発明をどのように特定するのかは本人に任されており、例えば
“a1+a2からなるA”という形で部分品の形態で保護を求める、
“a1+a2からなるAと、Bとを備えたX”という全体品の態様の保護を求める、
のどちらを選ぶかは特許出願人の自由ですが、
特許侵害の成立し易さという面では前者が有利であり、他方、寄与率の面では後者が有利であると考えられます。
(e)裁判所は、必ずしも寄与率の考え方を肯定している訳ではありません。
近年の傾向としては、できるだけ、損害額の推定を覆滅するべき事柄を個別具体的に人的し(→推定の覆滅とは)、客観的に損害額を決定しようとする傾向があります。
→寄与率のケーススタディ2
(f)100%から大幅に引き下げられた寄与率が認められるのは、例えば被疑侵害品が“特許の塊”と言われるようなものである場合です。
被疑侵害製品の性能に対する、侵害された特許の寄与の程度が低くなるからです。
特に同一の性能を達成するために複数の特許が存在し、そのうちの一つが侵害された特許であるような場合が該当します。 →寄与率のケーススタディ3
もっとも、裁判所は、寄与率を100%からの寄与率の大幅に引き下げることに慎重であることに注意するべきです。
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