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829 証拠原因/特許出願/進歩性/特許侵害 |
体系 |
実体法 |
用語 |
証拠原因 |
意味 |
証拠原因とは、裁判において事実の存否につき裁判官が心証を得るのに役立った資料や状況をいいます。
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内容 |
@証拠原因の意義
(a)証拠原因とは、証拠資料のうち裁判官が心証形成に採用したものをいいます。
(b)当事者の立証活動は、自己に有利な証拠原因を可能な限り多く裁判官に提供することを目的として行われることになります。
(c)例えば特許出願の進歩性を否定する立場であれば、要件事実として、特許出願に係る発明が先行技術の組み合わせであること、作用効果の面でも特許出願の発明のそれは元の先行技術の作用効果の総和を超えず、特別顕著な作用効果を発揮しないこと、などの立証が通常は行われます。
(d)さらには間接事実として、主引用例に追加する副引用例の内容は特許出願当時に周知の技術であったこと、その組み合わせにより技術的不利益を生ずるときには当該不利益を回避する手段が存在することを示す証拠を示し、組み合わせが当業者にとって自明であること、当該不利益は引用文献同士を組み合わせることを妨げる事情(阻害要因)にならないという主張を展開するかもしれません。
(e)そうした証拠のうち何れを採用するのかは、裁判官の自由な心証により決定され、採用された証拠が証拠原因です。
A証拠原因の内容
(a)特許出願の要件のうち進歩性の規定中の「容易に」は抽象的な評価に関する模範的要件であり、客観的に判断するのが難しい内容です。
→規範的要件
米国特許出願の実務では、発明の評価が難しい部分に光を当てるために、
・長期間要望されていながら不実施であった事実の証拠を示して、容易に発明できたのだったら誰かが既に実施していた筈である、
・発明商業的な成功に関する証拠を示して、商業的に成功したのだから、顕著な効果が存する、
などという主張をして認められる事例がよくありますが(→2次的考察)、日本の特許出願でも同様の主張が行われます。
(b)しかしながら、これらの事実は「容易に」発明できなかったことを推認させる間接事実に過ぎず、事案全体を総合的に判断して特許出願の拒絶審決を覆すという心証を形成するに至らない場合も多々あります。
→商業的成功のケーススタディ(不参酌事例)
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留意点 |
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