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@裁判所に顕著な事実の意義
(a)裁判所においては、事実の認定は証拠に基づかなければなりません。
(b)しかしながら、世の万人が疑わないような事実まで証拠を以て事実認定しなければならなばいとすれば、裁判の当事者にとっては大きな負担となります。
例えば特許出願の対象である発明は自然法則を利用した技術的思想ですが、こうした自然法則は、最新の知識ばかりでなく、万有引力の法則のような義務教育の教科書に記載されているようなものもあります。
(c)そこで法律上裁判所に顕著な事実は、当事者が自白した事実とともに、証明する必要がないものとされています(民事訴訟訴法第179条)。
(d)なお、同条は特許法の審判手続の証拠調・証拠保全に準用されていますが、自白された事実に関しては削除されています(特許法151条)。審判制度では職権主義を採用しているからです。
A裁判所に顕著な事実の内容
(a)裁判所に顕著な事実の態様として、下記のものがあります。
(イ)公知の事実
これは、世間一般に知れ渡っている事実であり、裁判所もこれを知っている事実をいいます(→公知の事実とは)。
特許出願の新規性・進歩性実務では、審決取消訴訟において、いわゆる周知事実のうちの一部がこれに該当する可能性があります(※1)。
(ロ)職務上顕著な事実(狭義の顕著な事実)
職務上顕著な事実とは、一般にあまり知られていなくても職務上の経験により知り得た事実です。
(b)これに対して、裁判官が個人的に知り得た事実は顕著な事実には含まれません。
例えば裁判官が新聞などを読んで知り得た事実を、特許出願に係る発明の新規性・進歩性の有無の審理の事実認定に用いることができるとすると、公正かつ的確な事実認定が出来なくなるおそれがあるからです。
→職務上顕著な事実とは
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