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 パテントに関する専門用語
  

 No:  836   

顕著な事実CS/特許出願/進歩性

 
体系 実体法
用語

顕著な事実のケーススタディ(事実認定において)

意味  裁判所に顕著な事実とは、裁判所が知り尽くしている事実であって、事実認定において立証することを要しないものをいいます。

 ここでは顕著な事実のうち公知な事実に関してケーススタディします。


内容 (a)裁判所に顕著な事実の態様として、公知の事実裁判所の職務上顕著な事実とがあります。

(b)前者は、通常の知識・経験を有する一般人が存在を疑わない程度に知れ渡っている事実をいいますが、知れ渡っている事情や態様の面で様々な種類があります。

(c)以下、公知の事実としての顕著な事実の態様を事例に沿って説明します。

@顕著な事実の事例に〔一般常識〕

〔事件番号〕平成24年(行ケ)第10176号

〔発明の名称〕内燃エンジンにおけるエンジン・ブレーキの方法及びシステム

〔事件名〕審決取消請求事件

〔顕著な事実の内容〕高地で大気圧等が低下していること

〔顕著な事実の前後の文脈〕

(a)原告は、本願発明は、大気圧等の低下によるエンジンブレーキ力の低下を補償するという特有の効果を有すると主張する。

(b)しかし、吸気過給圧を調整してエンジンを運転する場合、空気の圧力(密度)がその運転状態に影響を及ぼすことは、明らかである。

(c)すなわち、エンジンに吸入されて燃料を燃焼させるために必要な空気中の酸素の量も、エンジンブレーキ時に空気圧縮機として使用する場合の制動力も、原理的に吸気の圧力、容積(流量)等によって影響を受けるものである。また、一般に高地で大気圧等が低下していること顕著な事実である。そうすると…

A顕著な事実の事例2〔技術常識〕

〔事件番号〕平成23年(行ケ)第10279号

〔発明の名称〕「誘導発熱鋼管による水門凍結防止装置」事件

〔事件名〕審決取消請求事件

〔顕著な事実の内容〕建設・土木技術分野の全般に凍結防止装置の発熱鋼管の取付(施工)に類似する技術が存在している

〔顕著な事実の前後の文脈〕

(a)原告は、水門凍結防止装置の具体的な動作環境や施工環境は、原告以外の一般の当業者には全く知られておらず、通常の技術水準にある出願当時の当業者は、本件訂正発明の解決しようとする水門凍結防止装置の技術課題を認識することは全くできなかったから、本件訂正発明の技術課題を知り得ない当業者にとって、その発明が困難なものであることは明らかである旨主張する。

(b)しかし、水門における凍結防止装置の発熱鋼管の取付(施工)は、建設・土木技術分野に属するものであり、建設・土木技術分野においては、水門に限らず、例えば、パイプラインや道路についても、凍結防止装置の発熱鋼管の取付(施工)に類似する技術が存在している(当裁判所に顕著な事実)。

(c)そうすると、建設・土木技術分野における通常の知識を有する者(すなわち当業者)であれば、水門の凍結防止装置の発熱鋼管の取付(施工)に関する技術についても、その技術的課題を認識し、技術的な観点からこれに対応することは可能であり、また、相応の創作能力を発揮することができるものと考えられる。

B顕著な事実の事例1〔特許出願の実務常識〕

〔事件番号〕平成る27年(ネ)第10014号

〔発明の名称〕ビタミンDおよびステロイド誘導体の合成用中間体およびその製造方法

〔事件名〕審決取消請求事件

〔顕著な事実の内容〕国際的にみて明細書に発明の効果が記載されていない特許出願が存在すること。

〔顕著な事実の前後の文脈〕

(a)控訴人らは、訂正明細書に記載がある効果は、工程数の短縮のみであり、訂正発明の作用効果は、従来技術に比して、シス体を出発物質とした場合のマキサカルシトールの側鎖の導入工程を短縮したことにある、また、工程の短縮としての効率性はトータルとしての製造工程数で決せられるべきであり、総工程数が異なる場合は同じ作用効果を有しない旨主張する。

(b)しかし、控訴人らの同主張は、次の理由により採用することができない。

(c)平成6年法律第116号による特許法の改正は、同改正前の特許法36条4項が「発明の目的、構成及び効果」を明細書の発明の詳細な説明の必要的記載事項としていたところ、同改正後の同項、特許法施行規則24条の2により、「課題及びその解決手段」等を必要的記載事項としたものであり、発明の効果は明細書の発明の詳細な説明の必要的記載事項として規定されていない。現在では、実務上も、国際出願等に係る特許発明について「発明の効果」の記載のない明細書も多数存在しており(当裁判所に顕著な事実である。)、訂正明細書にも「発明の効果」を記載した部分がないのは、この改正に適合するものである。そして、明細書に「発明の効果」の記載がない特許発明について、一部の従来技術との対比のみにより発明の作用効果を限定して推認するのは相当ではない。


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