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853 新規性・“記載された”/特許出願/用途発明 |
体系 |
実体法 |
用語 |
新規性の要件としての“記載された”の意義 |
意味 |
新規性の要件としての“記載された”とは、当業者が容易に実施できる程度に記載されていることをいいます。
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内容 |
①特許出願の要件(新規性)としての“記載された”の意義
(a)特許出願の要件として新規性が要求されるのは、既に社会の共有財産となった発明について一事業者に独占権を付与することは却って産業の発達を阻害するからです。
(b)発明は現実の産業活動において実施されてこそ、社会の共有財産であると言えるのですから、当業者が実施できる程度に記載されていることが必要であるという解釈は、新規性の規定の解釈において必然的というべきです。
(c)「容易に」という条件が付くのは、構成から効果を予測することが記載されていることが困難な分野(例えば化学)において明細書に発明の構成が形式的に開示されているだけでは、発明が“記載された”に足りないことが多いからです。
特許出願の発明が要素a1+b1からなるものであり、先行技術である明細書において、各要素の上位概念である発明A+Bが記載されており、その実施例として要素Aの下位概念としてa1、a2、a3…、要素Bの下位概念としてb1、b2、b3…が開示されているときに、当業者が発明要素(a1+b1)という組み合わせを見い出すために相当の実験をしなければならないような場合です。
(a)なお、“容易に実施できた”というのは旧特許法での規定振りであり、現行法でも文言は異なるものの、同様と解釈されます。
②特許出願の要件(新規性)としての“記載された”のとして内容
(a)新規性の判断では、基本的に、発明の構成が記載されていれば、発明の効果が記載されていなくても、“発明が記載された”に相当します。
たとえ刊行物を記載した人が気づいていない発明の効果が後日発見されていても、それは効果の発見に過ぎないからです。
(b)もっとも芝生の着色剤として使用されていた物質に芝生の成長促進剤としての機能が認められたという如く新たな物の属性を発見した結果として新たな用途を提供する発明は、用途発明として新規性が認められます。発明の機序(メカニズム)が異なるからです。
→用途発明のケーススタディ3(発明の機序・肯定例)
(c)また一時的或いは偶発的に生じた構成が刊行物に記載されていたに過ぎない場合には、“発明が記載された”と認められない可能性があります。
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