内容 |
@既判力の意義
(a)既判力は、前の確定裁判でその目的とした事項に関する判断につき、当事者は後の裁判で別途争うことができず、別の裁判所も前の裁判の判断内容に拘束されるという効力です。
(b)例えば特許侵害訴訟で、特許権者甲が、発明品の製造者である乙に対して損害賠償請求をしたところ、乙が抗弁(例えば特許出願前に公知の技術から容易に発明でき、進歩性を欠くから、甲の請求は権利の濫用である)をし、これが功を奏して、甲の敗訴判決が確定したとします。
(c)この場合には、甲は、前記敗訴判決の確定後に再び同じ内容の損害賠償の請求を求めて提訴をすることができないし、後の裁判所もその請求を認めるべきではありません。こうした請求が認められると、先の裁判が無意味になってしまうからです。
こうした拘束力を既判力といいます。
既判力とほぼ同内容の用語として“実質的確定力”があります(→実質的確定力とは)。
A既判力の内容
(a)既判力は、先の裁判の当事者にのみ及びます。この点で特許法第168条のいわゆる一事不再理の原則とは異なります(→一事不再理の原則とは)。
(b)例えば前述の甲が、同じ特許権に基づいて、丙に損害賠償請求をしても、同じ特許権であるので既判力が及ぶということにはなりません。
丙は、当然に乙と同様に進歩性を欠くので権利濫用である旨の抗弁を行うでしょうが、これに対して、甲は何かの証拠により反論が可能であれば再抗弁を行なうことができます。
→再抗弁とは
裁判所は既判力により判断を拘束されないので、自由な心証により判断を行います。
|