体系 |
訴訟 |
用語 |
実質的確定力 |
意味 |
実質的確定力とは、裁判が確定した場合に、その内容に基づいて発生する拘束力を言います。実体的確定力とも言います。
|
内容 |
@実質的確定力の意義
(a)民事訴訟において、確定された裁判(特に判決)が確定すると、通常の不服手段では取り消すことができなくなります。
これを形式的効力といいます(→形式的確定力とは)。
(b)形式的確定力に対して、確定した判決の内容に応じて、後訴において同一事項が争点となった場合でも、当事者はこれに反する主張をすることができず、裁判所もこれと抵触する裁判をすることができないという効力を生じます。
こうした効力を実質的確定力と言います。
(c)実質的確定力と同様の概念として、既判力があります(→既判力とは)。民事訴訟法の専門書では、実質的確定力を既判力の別称として説明していることが多いです。
A実質的確定力の内容
(a)行政処分の実質的確定力に関しては、最高裁判所の判決があります(昭和62年(行ケ)第122号)。
“異議の決定、訴願の裁決等は、一定の争訟手続に従い、なかんずく当事者を手続に関与せしめて、紛争の終局的解決を図ることを目的とするものであるから、それが確定すると、当事者がこれを争うことができなくなるのはもとより、行政庁も、特別の規定がない限り、それを取り消し又は変更し得ない拘束を受けるにいたること、当裁判所の判例とするところである。”
(b)特許法において、既判力又は実質的確定力に類似する概念として、いわゆる一事不再理の規定(同第167条)があります。
(イ)すなわち、“特許無効審判又は延長登録無効審判の審決が確定したときには、当事者及び参加人は、同一の事実及び同一の証拠に基づいて審判を請求できない。”のです。
例えば、“特許出願の日前に公開された刊行物Xに記載された先行技術Aから当業者が当該特許発明を容易に発明することができた”旨の無効理由(進歩性の欠如)を理由として無効審判を請求して、請求棄却審決が確定した場合には、後の無効審判で、同一の事実(特許出願の日前に公開された刊行物Xに先行技術Aが記載された事実)を同一の証拠で立証しても、実質的な審理をしてもらえないということです。
紛争の蒸し返しを防止するためです。
(ロ)“同一の証拠”という限定を付けたのは、証拠方法の信頼性により審理の結果が左右されます。
(ハ)例えば無効審判請求人が刊行物Xの原本を手に入れることができず、刊行物Xの内容を引用した別の刊行物Yを証拠として提出します。但し、刊行物の頒布日は特許出願日の後だったとします。
一般的に、特許出願日に頒布された刊行物であっても、直ちに証拠としての証拠としての適格性を否定される訳ではなく、これを採用するかどうかは裁判所の裁量であると理解されています(→進歩性の問題点)。結局は、証拠がどの程度信頼できるのか(証明力)の問題だからです(→証明力とは)。
そして裁判所が刊行物Yを審理した結果、この証拠では、“特許出願の日前に公開された刊行物Xに先行技術Aが記載された”ことを認めるには足りないと判断し、請求棄却審決が出された場合、無効侵犯請求人は、あえてこの審決を争わず、その確定後に、刊行物Xそれ自体を探し出して、再度無効審判を請求できます。
単なる争い事の蒸し返しではないからです。
|
留意点 |
|
次ページ
※ 不明な点、分かりづらい点がございましたら、遠慮なくお問い合わせください。 |
|