内容 |
①当事者主義の意義
(a)当事者主義は、事実の解明や証拠の提出に関する訴訟の主導権を当事者に委ねる原則を言います。当事者主義に対立する概念としては、審判(特許無効審判・拒絶出願に対する拒絶審決不服審判など)において採用されている職権主義が存在します。
→職権主義とは
(b)すなわち特許無効審判のように当事者の主張を超えて審判官が特許出願時の技術常識を探知するようなことは、行政訴訟(審決取消訴訟)や民事訴訟では行われません。これは、権利や利害が対立する裁判では、事実関係を最もよく知る当事者に証拠の発見や提出を委ねることが効率的だと考えられるからです。
(c)もっとも企業対個人、或いは大企業対中小企業の対立となると、個人或いは中小企業の側が非常に不利になってしまうという指摘もあります。日頃から訴訟に備えて準備をしている側が裁判では有利だからです。
例えば先使用権を主張すれば裁判に勝てるというケースでも、先使用権の発生要件の証拠(他人の特許出願前から自ら発明の実施をしていたことなど)が残っていない、或いは、そもそも先使用権の規定を知らないとなると勝てる筈のものも勝てないからです。
→先使用権とは
裁判に勝てる証拠の収集などを日常的に行っていることが重要です。
②当事者主義の内容
民事訴訟法における当事者主義は、弁論主義と処分権主義という形で現れます。
前者は、民事訴訟法上において、訴訟の解決や審理の資料の収集を当事者の権能かつ責任とする主義であり(→弁論主義とは)、
後者は、民事訴訟法上、当事者が美雨から訴訟の解決を図って、訴訟を処分できるという主義です(→処分権主義とは)。
③当事者主義の関連事項
例えば民事訴訟法第40条は、
・訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合には、その一人の訴訟行為は、全員の利益においてのみその効力を生ずる(1項)。
・前項に規定する場合には、共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為は、全員に対してその効力を生ずる(2項)。
と規定されていますが、これは民事訴訟法が当事者主義をとっていることを前提としてます。そうしないと共同訴訟人が誤って行った行為が全員に効力を及ぶと、真理の解明や証拠の提出が十分に尽くされないままで判決が出されてしまう可能性があるからです。
特許庁の審判(無効審判など)では、当事者主義を採用していないため、こうした規定は採用されていません。
|