[判決言い渡し日] |
平成14年12月26日 |
[発明の名称] |
病態モデル動物の作製方法 |
[主要論点] |
当業者の創作能力を基準とした進歩性の判断 |
[判例の要点] |
進歩性の判断の基準となる当業者は、課題解決に関連する技術を自らの知識とし、かつ通常の創作能力を発揮する者と想定されているので、本件特許出願の発明の動機付けが引用例中に与えられているときには、引用例の技術を実行するための諸条件を技術常識の範囲で設定する程度のことは、当業者の通常の創作能力の範囲であると言えます。 |
[本件へのあてはめ] |
原告は、引用刊行物の、横転時間の測定に用いる薬品の濃度は、市販のモルモット群における気道過敏性の検討を調べるための薬物濃度として記載されているのであり、継代選抜による気道過敏系モルモットの選抜基準として記載されているわけではない、などと主張しています。 しかしながら発明の進歩性を判定する際に基準とされる当業者とは、問題となっている発明の属する技術分野の基準時(特許出願日又は優先権主張日)における技術常識を有し、研究、開発のための通常の技術的手段を用いることができ、材料の選択や設計変更などの通常の創作能力を発揮でき、しかもその特許出願に係る技術分野及びその特許出願の発明が解決しようとする課題に関連した技術分野の基準時の技術水準にあるものすべてを自らの知識とすることができる者のことをいいます。 引用刊行物によって、「横転開始所要時間」を指標とする気道過敏系モルモットの作製を試みるという動機付けが与えられているのであるから、@同刊行物に示された横転開始所要時間の測定において、0.08%濃度のアセチルコリン及び0.025%濃度のヒスタミンが用いられており、同刊行物(第5図及び第6図)に、濃度はそれぞれ0.1%、0.05%であって、上記0.08%、0.025%とは異なるものの、アセチルコリンあるいはヒスタミン吸入によるモルモットの横転開始所要時間の分布も示されており、さらに、同刊行物に0.08%濃度のアセチルコリン及び0.025%濃度のヒスタミンを用いた場合の横転開始所要時間についても記載されているのであれば、これらを適宜、継代選抜による気道過敏系モルモットの選抜基準として採用し、吸入させる薬物としては0.08%濃度のアセチルコリン及び0.025%濃度のヒスタミンを、横転開始所要時間としては150秒以下を選択することは、当業者にとって、容易に想到し得る事項である、という以外にありません。この程度の事項を容易推考の範囲外にあるとするのは、人(当業者)の有する理解力や応用力を余りに低く設定するものであり、不合理であることが明らかです。 |
[先の関連判決] |
平成23年(行ケ)第10130号(当業者基準の進歩性(肯定例)) |
[後の関連判決] |
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