[判決言い渡し日] |
平成24年1月16日 |
[発明の名称] |
気泡シート及びその製造方法 |
[主要論点] |
当業者の創作能力を基準とした進歩性の判断 |
[判例の要点] |
当業者は、特許出願に係る発明が解決しようとする課題に関連する技術分野の技術を自らの知識とし、材料の選択や設計変更などの通常の創作能力を発揮できるものですが、発明の対象である物の基本的な構造を変更することが容易であるかどうかは、技術常識を踏まえて具体的にかつ慎重に判断するべきです。 |
[本件へのあてはめ] |
本件特許の気泡シートは、キャップフィルムとバックフィルムと一層からなるライナーフィルムとを有する三層構造を備えています。 審決は、先行技術のうちライナーフィルムの相当する部分(ポリレフィンフィルム31及び粘着層32の二層からなる粘着シート)を一層の構造とすることは当業者が容易に想到し得るとしました。 しかし、積層体の発明は、各層の材質・積層順序・、膜厚、層間状態等に発明の技術思想があり、一般論としても、新たな機能を有する層を付加することが容易想到といえるとしても、従来複数の層により達成されていた機能をより少ない数の層で達成しようとする場合、複数層が全体としてどのように機能しているかを具体的に検討しなければならず、また、そもそも粘着剥離を繰り返せる引用例2の粘着シールの発明と、被着体を衝撃から保護するための引用例1の気泡シートの発明とでは技術分野ないし用途が異なります。 当業者は、発明が解決しようとする課題に関連する技術分野の技術を自らの知識とすることができる者であるから、気泡シートの分野における当業者は、引用発明1Aが「粘着剤層32」を有していることから「粘着剤」に関する技術も自らの知識とすることができ、「粘着剤」の材料の選択や設計変更などの通常の創作能力を発揮できるとしても、引用発明1Aを構成しているのは「粘着剤層32」であるから、当業者は、気泡シート内でポリオレフィンフィルム31上に形成されている粘着剤層32に関する知識を獲得できると考えるのが相当です。 両者を合わせて気泡シートの構造自体を変更すること(「ポリオレフィンフィルム31上に形成されている粘着剤層32」という二層構造を、気泡シートの構造と粘着剤の双方を合わせ考慮して一層構造とすること)まで、当業者の通常の創作能力の発揮ということはできないというべきです。 |
[先の関連判決] |
平成12年(行ケ)第404号(当業者基準の進歩性(否定例)) |
[後の関連判決] |
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