[判決言い渡し日] |
平成25年12月13日 |
[発明の名称] |
安定材付きベタ基礎工法 |
[主要論点] |
職務発明についての特許を受ける権利を使用者等に予約承継させた場合に従業者等が受けるべき相当の対価(現行法にいう相当の利益)を実施料率方式で定める際の評価要素(独占の利益・仮想実施料率・使用者等の貢献の割合)の考え方。 |
[判例の要点] |
相当の対価の算定に考慮されるべき“その発明に対して使用者等の受けるべき利益”は“独占の利益”を言うものと解されるところ、使用者等が自ら実施する場合の独占の利益は超過利益と解され、この超過利益は超過売上額に仮想実施料率を乗じる方式で計算できますが、この算定に際しては、当該発明の技術的意義や代替技術の有無を考慮するべきです。 [超過利益]=[超過売上額]×[仮想実施料率] 超過利益の全体のうちで発明の成立に使用者等が貢献した割合を割り引いた部分が“相当の対価”となりますが、使用者等の貢献を評価する場合には実施の事業の発注者と受注者との繋がりなどの経済上・営業上の要因も考慮されるべきです。 [相当の対価]=[超過利益]×[1−使用者等の貢献の割合] ・独占の利益…使用者等が発明を実施することにより得られる利益全体のうち他者に禁止権を行使し得ることにより得られるべき利益。 ・超過利益…超過売上額を得たことに基づく利益。 ・超過売上額…他者に実施許諾した場合に予想される売上額を上回る利益の額。 |
[本件へのあてはめ] |
@親会社と子会社との間で特定の技術の実施である事業の受注が行われており、当該技術の後継技術として本件職務発明が採用されたなどの事情があることを考慮すれば、被告である使用者等の貢献の割合は相当に大きいから、これを90%と解するのが相当です。 A本件職務発明は、特許出願当初の発明の構成・効果では進歩性が認められず、追加の要素を付加して特許査定に至ったこと、同種の効果を発揮できる代替技術が存在したことなどを考慮すれば、超過売上額の割合は原告が主張する程度(70%)に高くはなく、30%程度と認めるのが相当です。 B原告は、被告が前記事業の実施のために親会社から許諾を受けた通常実施権(再通常実施権)の実施料率が2.5%であり、本件発明はこれより技術的に優れているから、仮想実施料は2.5%を下らないと主張しますが、親会社と子会社という関係や親会社から事業を受注する代わりに実施料を支払っていたという事情を考慮すると、純粋の実施料の趣旨とは解されないから、実施料率の参考とするべきではなく、前述の特許出願の経緯から理解される本件発明の意義を考慮し、この業界での実施料の最頻値が3%(平均値が3.5%)であることなどを総合的に判断すると、仮想実施料率は2%と認めるのが妥当です。 |
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