[判決言い渡し日] |
平成29年 3月24日 |
[発明の名称] |
ビタミンDおよびステロイド誘導体の合成用中間体およびその製造方法 |
[主要論点] |
均等論の第1要件の本質的部分及び均等の範囲の関係 ※本稿では均等の第1要件を中心に解説します。第5要件に関して下記参照。 →平成27年(ネ)第10014号[その2] |
[判例の要点] |
従来技術に見られない特徴的部分であると解釈される本質的部分を認定する際には、従来技術と比較した貢献の程度に応じて次の通り解すべきです。 ・貢献の程度が大きいときには、請求の範囲の記載の一部を上位概念化する。 ・貢献の程度がそれ程大きくないときには請求の範囲の記載と略同義とする。 |
[本件へのあてはめ] |
ビタミンDの誘導体には、主鎖の一部に有する二重結合が、主鎖の別の場所から突き出す側鎖を同じ向きに位置するシス体と反対側に位置するトランス体との2種類の異方体がありますが、本件特許発明では、特許出願時から特許査定時まで一貫して請求の範囲に図表によりシス体が特定されていました。 本件発明は、側鎖にエーテル結合及びエポキシ基を1行程で組み込み、そのエポキシ基を変化させることでマキサカルシトールの側鎖という側鎖を導入するものです。 これに対して、相手側の方法は、トランス体から出発し、同様の行程を経て最後にトランス体からシス体へ移行するものです。ビタミン構造のトランス体はシス体に比べて酸化抵抗性及び安定性に優れるという利点があります。 裁判所は、本件発明の本質的部分は、先行技術に見当たらない、エーテル結合及びエポキシ基を一行程で導入することのみにあり、出発物質がシス体かトランス体かということは本質と無関係と判断しました。 何故ならば、本発明はエーテル結合及びエポキシ基を一行程で導入するという特徴により、ビタミンDにマキサカルシトールの側鎖を導入する“工業的に実施可能な初めての方法”として発明の貢献度が高いと評価されたからです。 |
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