[判決言い渡し日] |
1998年2月3日 |
[発明の名称] |
安全に穿孔する装置及び方法 |
[主要論点] |
特許出願の発明が共同発明か否かで食い違う関係者の証言の評価 |
[判例の要点] |
@研究開発を共同でした関係者甲及び乙の間で開発の成果である発明が甲の単独発明であるか甲・乙の共同発明で意見が分かれているときには、乙が当該発明の構想(conceiption)に貢献したのかどうかを論点にして発明者性を決定します。 乙が単に発明の実施化(reduce into practice)のためのアイディアを提案しただけであれば、共同発明者ではありません。 A前記論点に関して当事者の証言が食い違う場合には、証言を裏付ける証拠を検討します。 その検討の過程では、当事者の主張が食い違う個々の事実について裏付けがあるか否かなどに拘らず、合理の原則に従い、証言の信頼性を評価します。→合理の原則とは |
[本件へのあてはめ] |
@生体壁(例えば腹壁)を貫通してキャビティ(例えば腹腔)内へトルカール(穿設器具)が入ったときに、トルカールが貫通したことを検知する構成(クレーム33)、及び、貫通時にトルカールが引き戻される構成(クレーム47)に関して特許が付与されています。 A裁判所は、クレーム33に関して、甲・乙が次のように貢献したと認めました。 ・甲…トリカールが生体壁を貫通したときに検知信号を発生する旨の全体の構想。 ・乙…トルカールの先端の鋭いブレード面に設けた開口から鈍いプローブを突出する構想 B裁判所は、クレーム47に関して、甲・乙が次のように貢献したと認めました。 ・甲…生体壁を貫通したときにトリカールが引き戻される旨の全体の構想。 ・乙…予めトロカールを引き戻し方向へ付勢するとともに引き戻しを引き留める棒状のストッパを配置し、生体壁の貫通をセンサで検知して前記引き留めを解除する構成。 C裁判所は、乙が発明に対して行ったとする貢献を、単なる発明の実施化ではなく、発明の主題の構想であると認めました。 D甲は、特許出願前に乙によって描かれた発明のスケッチに関して、自分が教示した技術をそのまま描いたに過ぎず、乙が共同発明者であることの裏付けにならないと主張しました。 F裁判所は、以下の周辺的要素を考慮して、合理の原則から乙が共同発明者であることに関して明確かつ説得力のある証拠が存在すると判断しました。 ・乙のスケッチが技術的に洗練された内容を含むというエレクトロニクスの専門家の意見 ・乙がエレクトロニクスの技術者であったこと ・甲がエレクトロニクスの観点から新製品の開発にアシストを求めていたこと ・甲と乙との協力関係が18ヶ月という長期間に亘りかつその間の仕事に対して乙は報酬を受けていないこと |
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