[判決言い渡し日] |
平成11年6月29日 |
[発明の名称] |
脇の下用汗吸収パッド |
[主要論点] |
特許出願人(実用新案登録出願人)が発明(考案)の技術的範囲に属しないことを承認していないが、それを承認したように理解される外形的な行動を採ってしまった場合への包袋禁反言を適用することの可否 |
[判例の要点] |
包袋禁反言の法理は、特許出願(実用新案登録出願)において、出願人がいったん発明(考案)の技術的範囲に属しないことを承認した場合に限らず、その内心の意思にかかわらず、外形的にそのように解されるような行動をとった場合にも、特許権者(実用新案権者)が後にこれと反する主張が許されない趣旨というべきです(平成6年(オ)第1083号)。 けだし、出願人において一定の外形を作出した場合において、特許権者(実用新案権者)が後になって右外形に反する主張をすることを許すときは、右外形を信頼した第三者の利益を不当に害するからです。 |
[本件へのあてはめ] |
本件は、 ・脇の下用汗吸収用パッドの特定部位の縁部に関して、請求の範囲には(他の彎曲部位より)“曲率の小さな3つの彎曲を連ねた縁形状とした”旨の記載があり、願書に添付された図面には“曲率半径の小さな3つの彎曲を連ねた縁形状とした”構造が記載されており、 ・実用新案権者が請求の範囲中の“曲率の小さな”を“曲率半径の小さな”と誤記訂正する訂正審判を請求して訂正審決と受けるものの、訂正無効審判を請求され、訂正の無効の審決が確定した場合であって、 ・侵害訴訟において、実用新案権者が“曲率の小さな”を“曲率半径の小さな”と置き換えて均等論を適用することを主張したケースです。 仮に“曲率半径の小さな”と記載するべきところを“曲率の小さな”を誤記したのであって、意図的に権利範囲からを“曲率半径の小さな…”の構成を意図的に請求の範囲から除外したのではないとしても、 ・図面に記載した“曲率半径の小さな”構成を請求の範囲に記載できたのにしなかったこと、 ・請求の範囲及び明細書の記載を字義通り(“曲率の小さな”)に解釈しても、技術的意義(従来技術の欠点の解消)を理解することができ、これを実施することも可能であることを併せて考えれば、 出願手続において当該特定部位の形状を“曲率の小さな3つの彎曲を連ねた縁形状とした”ものに限定したと外形的に理解される行動をとったというべきであり、均等論の第5の要件(別段の事情がある場合)に欠くから、均等論の主張は認められません。 |
[先の関連判決] |
平成3年(ワ)第9782号「半導体装置」事件 |
[後の関連判決] |
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