[判決言い渡し日] |
September 20, 1983 |
[発明の名称] |
スピン安定体の速度制御及び方向付け |
[主要論点] |
特許出願中の補正により先行技術を回避するために追加された技術的要素に関して均等論を適用することは可能かどうか。 |
[判例の要点] |
特許出願の審査において先行技術に基づいて新規性・進歩性(自明性)を欠如する旨の拒絶理由が提示され、これに対して、特許出願人が当該拒絶理由を克服するために或る技術的要素をクレーム(請求項)に追加した場合には、 ・後の特許侵害訴訟で前記技術的要素が前記先行技術を回避するために必要なかったと主張することは禁止されますが、 ・当該技術的要素に関して均等論を適用する余地がなくなる訳ではありません。 |
[本件へのあてはめ] |
特許出願人(発明者)は、24時間通信などに使用するために、スピン軸に対して首振り運動しながら姿勢制御を行う静止衛星の発明を特許出願したところ、ターゲットへの衝突軌道を維持するために首振り運動して姿勢制御される自己案内式の飛翔体が引用例として引かれました。 そこで特許出願人は、自己案内式の技術と差別化するために、衛星が有するセンサが検出した姿勢制御に必要な全ての情報を地上に送信し、その情報に基づいて地上クルーが計算した制御シグナルを受領して制御するという要件を追加しました。 こうした補正をした理由としては、静止衛星の設計仕様として軽量であることが必要であり、特許出願時の技術では衛星内部で制御の計算を実行できる機能を有するコンピュータを搭載すると重量オーバーとなってしまうという事情がありました。 しかしながら、特許出願後のコンピュータ技術の発展により、地上からの指令の下で制御に必要な計算を衛星内部で行うタイプの静止衛星が製造され、これに対して均等侵害が成立するかどうかが争点と成りました。 裁判官は、特許出願の手続においてクレームを補正するのは全く普通の実務であるから、補正の効果は補正の種類及び目的により異なるべきであると指摘し、本件の場合に均等侵害の成立を認めました。 |
[先の関連判決] |
GRAVER TANK … v. LINDE AIR PRODUCTS CO. 339 U.S. 605 |
[後の関連判決] |
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