[事件の概要] |
@事件の経緯は次の通りです。 (a)事件の概要 James A Johnstonはプリント回線ボードを製造するための要素(コンポーネント)を発明し、1991年8月に特許出願し、1992年10日に特許を取得した。この特許は、その後JOHNSON & JOHNSTON ASSOCIATES INC.,(以下Johnstonという)に譲渡された。 1997年にR.E.Service Co.,(以下RESという)はプリント回路ボードを製造するための新しい積層体を製品として生産し始めた。この製品は、銅製フォイルをアルミニウムのシートに代えてスチールのシートに接合したものだった。 Johnstonは地方裁判所に特許侵害の訴状を提出した。 RESの製品が文言上の侵害に相当しないことは明白であったため、RESはその旨の簡易判決(summary judgement)の動議を提出し、地方裁判所はこれを許可した。 →Summary Judgement(略式判決)とは 均等侵害の是非を判断する上での論点は、後述の通り、特許出願人が明細書に記載していながら敢えてクレームしなかった事項(スチールサブストレート)に関して均等論を適用して良いのかということであった。 地方裁判所は、スチールサブストレートが公衆の用に供されていないと判断し、そして均等侵害の成否・損害の有無・故意侵害について審理した。陪審は、均等論を適用して被告の故意侵害を認定し、損害額を算定した。 (b)本件特許発明 プリント回線ボード(printed circuit board)等の製品を製造するためのコンポーネントにおいて、 完成品である回路ボードにおいて機能エレメントして作用する銅製フォイルのシート及び廃棄可能なエレメントであるアルミニウムのシートからなり、各シートの一面が汚染されておらずかつ相互にインターフェイス結合するように形成した積層体と、 前記汚染されていない両シートの面をそれらの境界で接合し、かつ前記インターフェイスの非接合個所として前記シートの内側に汚染されていない中央部分を形成するように設けられた柔軟な接着剤のバンドと、 を具備するプリント回線ボード等の製品を製造するためのコンポーネント。 (d) 本件明細書の記載等(判決文からの抜粋) (イ)技術分野 本件特許は、プリント回線ボードの製造に関する。 (ロ)背景技術及び発明の課題 プリント回線ボードは、非常に薄い導電性銅製フォイルを誘電体(非導電性)樹脂材料のシート(プレペリ)に適用してなる。 回路ボードの製造プロセスにおいては、まず銅製フォイル及びプレペリを圧接状態で積み重ね、次にこれらを加熱してプレペリの樹脂を融解させ、それらの層を結合させる。 これらの回路ボードを生成する際に、作業員は、積み重ね過程において薄い銅製フォイルのシートを手作業で取り扱う。本特許なしでは、手作業で積み重ねることは、脆いフォイルにダメージを与えかつ汚染しかねない。その結果としてエッチングされた銅製回路同士の不一致を生じる。 本特許はこうした手作業のダメージを回避できるアセンブリを提供する。 (ハ)発明の構成・作用 この発明は、脆い銅製フォイルを強固なアルミニウム製のサブストレートに適応するというアイディアにこだわって(adhere)いる。 このアルミニウム製サブストレートを保護剤として用いることにより、作業員は、脆い金属製フォイルにダメージを与えることなく、アセンブリを取り扱うことができる。前述の圧接及び加熱工程の後で作業員はアルミニウムサブストレートを取り除くことができ、さらには当該アルミニウムシートを再利用することまでできるのである。 本件特許の図5は、一つのコーナーで一枚の銅製フォイルをはがしたフォイル・サブストレート・コンビネーションを図示している。同図に示された表面Ciは銅製フォイルの保護された内面であり、Aiはアルミニウムサブストレートの内表面である。その端部では柔軟な接着剤40の帯がサブストレートとフォイルとを接合しており、その内側には保護された中央ゾーンCZが形成されている。 また明細書には次の記載がある。 ・“破れやすくかつ薄い銅製フォイルCはアルミニウムサブストレートAに対して接合によって固定されているから、その積層体は、丈夫となり、手作業の取り扱いに耐え得るものとなるので、銅製フォルムの破損による歩留まりの低下を回避できる。接着されるサブストレートAを使用することは、その材料が何であれ、フォイルを益々薄くすることができ、作業のオートメーション化を可能とする。なぜなら、本発明を利用することにより、物理的なサポートが必要なくなるからである。”(明細書第8コラム第21?30行目) ・“アルミニウムは、現在好んで用いられる素材であるが、その他の材料、例えばステンレススチールやニッケル合金を用いても良い。”(明細書第5コラム第5?8行目) A当事者の主張は次の通りです。 {原審での当事者の主張} (a)均等侵害に関して、被告であるRESは、Maxwell v. J. Baker, Inc., 86 F.3d 1098 (1996)を引用して、本件特許の明細書にはスチールサブストレートが開示されているが、これをクレームしていないから、当該事項は公衆の用に供されたものとなると主張した。 (b)原告であるJohnstonは、YBM Magnex,Inc. v. Int'l Trade Comm'n, 145 F.3d 1317 (1998)を引用して、スチールサブストレートは公衆の用に供されていない、と主張した。 {控訴審での当事者の主張} (a)控訴審において、RESは、銅・スチール積層体と銅・アルミニウム積層体との間の均等性についての陪審の事実認定を争わなかった。その代りに、RESは、Maxwell判決を引用して、“Johnstonはスチールサブストレートをクレームせずに保護範囲をアルミニウムサブストレートに限定したのだから、クレームされていない発明の主題は公衆の用に供された。”と主張した。 (b)Johnstonは、YBM Magnex判決を引用してスチールサブストレートは公衆の用に供されていないと反論した。 (c)Maxwell判決において、特許クレームは、組である一対の(a mated pair of)靴を相互に連携させるシステムに関する。 Maxwellは、相互に連携する靴同士の内側及び外側の底(sole)の間の固定タブをクレームしている。 他方、Maxwellは、“靴の裏地の縫い目に縫い付けられた固定タブ”を開示していたが、クレームしていなかった(米国特許第4624060号)。 “(特許出願人が)開示しながらクレームされなかった事柄は公衆の用に供されたものとなる。”という良く確立した原理に基づいて、裁判所は、法律問題として被告(Backer)は開示されているがクレームされていない事項を実施しているに過ぎないから、均等侵害をしていないと判断した。この裁判所は次のように判示している。 “Maxwellがこれらの選択肢をクレームし損なったため、特許商標庁はこれらの選択肢が」特許可能であるか否かを審査する機会を奪われた。 靴業界の当業者は、本件特許の明細書や(特許出願等の)手続の履歴を読み、かつクレームを解釈して次のような結論に至るであろう。 Maxwellは、靴の内側の裏地に取り付けられるタブを用いて靴同士を連携させるシステムという選択肢をクレームしなかったために、当該システムを公衆の用に供した。” (d)YBM Magnex判決において、特許クレームは、6000 ?35000ppmの酸素をという要素を含む恒常的なマグネット合金を対象としている(米国特許第4588439号)。 訴えられた係争物は、類似のマグネット合金であるが、酸素の含有量が5450?6000ppmであった。これは(特許出願人が)明細書に開示したがクレームしなかった事項である。 YBM Magnex事件で裁判所はMaxwall判決で新しいルール、すなわち、明細書に開示されながらクレームされなかった事項が決して均等論の適用対象とならないというルールが生じたわけではないと主張する。当該裁判所は次のように述べた。 “Maxwellは、クレームされなかった選択肢について(特許出願の)審理を受けることを回避した。その選択肢は、クレームした事項とは明らかに異なる(distict from)ものであった。すなわち、2つの実施例が明らかに異なり、両者は完全に別々に開示されていた。こうした事情のもとで連邦巡回裁判所(CAFC)はMaxwellに対してクレームされていない実施れいに均等論を適用する機会を否定したのである。” 換言すれば、YBM Magnex判決は、Maxwall判決は開示されながらクレームされていない事項が明らかに区別される場合に限って適用されるものと主張しているのである。 |
[連邦巡回裁判所の判断] |
@連邦巡回裁判所は、まずクレームの優位性に関して次のように説諭しました。 (a)最高裁判所及び当裁判所は、特許権の保護範囲がクレーム(請求項)によって決まるによって決まるという基本原理を支持する。この点に関して次の判例を参照せよ。 ・“クレームは発明を測る尺度である。” Cont’l Paper Bag Co. v. E. Paper Bag Co., 210 U.S. 405, 419 (1908) ・“クレームのみが特許権を規定する。” Atl. Thermoplastics Co. v. Faytex Corp., 974 F.2d 1299, 1300 ・“発明の尺度はクレームである” SRI Int’l v. Matsushita Elec. Corp., 775 F.2d 1107, 1121 (b)従ってクレームは、特許の保護範囲を通知する機能を有する。例えばMahn v. Harwood, 112 U.S. 354, 361 (1884)は、“特許権者の側の最も厳粛な行為として、(請求項中に)これこれのエレメント或いはコンビネーションに関して発明の保護範囲がクレームされ、それ以外には何もクレームされていないということが、公衆に通知され了知される。”と述べている。 クレームは、米国特許商標庁(US PTO)の審査官及び公衆(潜在的な競業者を含む)の双方に対して前述の通知機能を果たす。 (c)クレームが発明の範囲を定めて通知する機能に対応して、クレームの記載要件は、特許出願人に対して、明細書ではなくクレームにおいて発明を定義するように求める。要するに発明の尺度となるのはクレームであり、明細書ではないのである。この点に関して次の判例を参照せよ。 ・“発明のエレメントの組み合わせとして明細書から導き出すことが可能な全てのもののうちで、彼(特許出願人)はクーレムに記載したことだけを保護対象としてリザーブしたのである。” Milcor Steel Co. v. George A. Fuller Co., 316 U.S. 143, 146 (1942) ・“発明は、それが実施できるように開示されていなければならないが、発明の尺度となるのはクレームである。” Cont’l Paper Bag, 210 U.S. at 419 ・“権利者が(侵害から)救済される範囲の尺度となるのはクレームである。明細書はその範囲を狭めるために言及されることがあり得るが、決してその範囲を拡張するために用いられてはならない。” McClain v. Ortmayer, 141 U.S. 419, 424 (1891) ・“明細書は発明を教示し、クレームは保護を求める。” SRI Int’l, 775 F.2d at 1121 (d)さらにまた権利侵害の法は、係争物を、裁判所によって解釈されたクレームと比較する。侵害は、それが文言侵害であれ、均等侵害であれ、“係争物を明細書中の好ましい実施形態または権利者の製品”と比較して成立させてはならない。SRI Int’l, 775 F.2d at 1121. (e)1880年代から、最高裁判所は、クレームの優越的な役割を強調していた。 例えばMiller 事件は、オリジナルの特許の発行から15年を経過した後の特許の再発行に関するものであるが、その判決文において、最高裁は“特定の装置・コンビネーションをクレームしてその他の装置・コンビネーションをクレームしていないことは、それらの装置・コンビネーションを公衆の用に供したことになる。”旨を判示している。Miller v. Bridgeport Brass Co., 104 U.S. 350, 352 (1881)。 この数年後に最高裁判所は別の特許の再発行の事案について次のように述べた。 “クレームは、実質的にクレームされていない事項のディスクレーマー(権利放棄書)として働く。法は、こうした取り扱いに注意するように特許権者に促す。” Mahn, 112 U.S. at 361. さらに最高裁は次のように述べた。 “もちろん、クレームされていない事項は公衆の財産となるのである。請求項に記載されていない事柄は、特許権者によって発明されていないこと、すなわち特許出願人が発明をする前に公知・公用となっていることが一般的であるが、これは推測にすぎない。もっともそれが事実であるかどうかとは別に、特許出願人の行為により、その事柄が公衆の財産となってしまう可能性がある。”(Mahn v. Harwood 112 U.S. 354)。 (f)均等論は、権利の効力を文言通りの範囲を超えて及ぼすものである。 最高裁判所は、現代的な均等論をGvaver II事件に(1950)において初めて適用した。この事件の判決において最高裁は次のように述べた。 “均等性は、特許の内容、先行技術及び事件の特定の状況に応じて決定されなければならない。” Graver Tank & Mfg. Co. v. Linde Air Prods. Co. 339 U.S. 605, 609 (1950). 先行するGraver I事件では問題となったクレームの有効性が争われた。裁判所は、ケイ酸塩(silicate)及び金属ケイ酸塩を含む化合物のクレーム24及び26を無効とした。 336 U.S. 271, 276-77 (1949) 最高裁は、これらのクレームが広過ぎると判断したのである。何故なら、これらのクレームは、機能する9つの金属ケイ酸塩の他に機能しない幾つかのケイ酸塩を含んでいるからである。裁判所はアルカリ土類金属を含む、より狭いクレームを無効としなかった。 Gvaver II事件に侵害行為に関して、最高裁は、アルカリ土類金属を含む狭いクレームについてのみ言及した。侵害品であると訴えられた化合物は、それら狭いクレームの化合物に類似しており、ただ狭いクレーム中の“アルカリ土類金属のケイ酸塩”に代えて、“マンガンのケイ酸塩”を用いていたことで相違していた。ちなみに無効となった広いクレームの“金属ケイ酸塩”はマンガンケイ酸塩を含む。 この事件で最高裁判所は、“その相違が非実質的(insubstantial)なものであり”、かつ訴えられた侵害品は“実質的に同じ態様(in substantial the same way)で”、“実質的に同じ機能を発揮し(perform substantially same function)”、 “同じ結果をもたらす(obtain the same result)”と認定した。このため、当該裁判所は、均等侵害が成立すると判決した。 裁判所の判決及び事件の経緯は、クレームされていなかった発明の主題が公衆の用に供されたものではないことを示している。裁判所が関連するクレームを広過ぎると判断したにせよ。特許権者は、均等の発明の主題をクレームしていたのである。(中略) V Maxwell事件で説明したように、パテントドラフタ(特許出願人)が発明の主題を開示しながらクレームしていないときには、この行為は当該発明の主題を公衆の用に供した(dedicate)ことになる。そうしてクレームされなかった事柄を均等論によって回復しようとすることは、特許権の範囲を定める上でのクレームの優位性に反するものである。Sage Prods. Inc. v. Devon Indus., Inc., 126 F.3d 1420, 1424 この点に関してはさらに次の判決をみよ。 ・“均等論は、公衆が侵害を避けるために頼りとする、クレーム中の意味ある構成的及び機能的限定を消し去ることはできない。”(Conopco, Inc. v. May Dep’t Stores Co., 46 F.3d 1556, 1562) ・“裁判所が均等論を適用する上で重要なことは、クレームが特許権の保護範囲を規定するための基本原則に対して重大な矛盾を生じないようにすることである。”(Charles Greiner & Co. v. Mari-Med Mfg., Inc., 962 F.2d 1031, 1036) さらにまた特許権者は、PTO での検討の手続き(特許出願の審査)を回避するために狭いクレームを作成しながら、明細書中の広い開示を根拠として均等論を適用することにより他人の行為を侵害と主張することが許されない。“そうしたことが許されるとすると)その結果として、特許出願人が広い開示事項を含む明細書及び狭いクレームを提示し、明細書に見合った広いクレームを提示することを回避するということを促進することになりかねない。” (Maxwell判決 86 F.3d 1107)。 Maxwellのルールを適用することにより、裁判所は、PTO で特許出願が適正に審査された範囲を超えて排他権の範囲が及ぶことを回避する。このことに関しては次の判決を参照せよ。 “裁判所はPTO又はPTOが拒絶した特許出願を委ねられた抗告法廷(appellant tribunal)が許可したクレームの範囲を超えて特許を拡張する権限を持たない。”(Keystone Bridge Co., v Phoenix Iron Co., 95 U.S. 274, 278) A連邦巡回裁判所は、本件に関して次のように分析しました。 (a)本件では、特許クレーム中では「アルミニウムからなるシート」(sheet of aluminum)及び「アルミニウムシート」(aluminum sheet)と限定的に特定しており、他方、特許明細書には「アルミニウムは、現在好んで用いられる素材であるが、その他の材料、例えばステンレススチールやニッケル合金を用いても良い。」と記載されている(コラム5II第5?10行目)。 (b)(特許出願人が)スチール製サブストレートについて明細書に開示していながらそれをクレームしていなかったことにより、原告は、アルミニウムという限定を含む権利がスチールを含むように拡張するために均等論を利用することができない。 (c)従って原告は“開示されているがクレームされていない事項”に均等論を適用することを主張することができない。この大法廷裁判所(en banc court)は、YBM Magnex判決がこの決定と矛盾する限りの範囲において当該判決を無効とする。 しかしながら、或る発明の主題をクレームし損なって不利を被った特許権者には、救済の余地が残されていない訳ではない。或る特許出願に対するオリジナルの特許が許諾されてから2年以内であれば、再発行特許出願をすることができる(→再発行特許出願とは)。これにより、開示されているがもともとクレームされていなかった事柄が保護範囲に含まれるようにオリジナルのクレームを拡張することができるのである。米国特許法第251条(2000年)。 これに加えて、特許権者は、米国特許法第120条(関連するすべての特許出願について特許が許諾される前に継続出願をすることができる)の規定の下で当該開示事項について別個の特許出願をすることもできる(→継続出願とは)。実際に原告は、これら2つの選択肢のうちの後者を利用して、当該発明の主題を文言上包含する2つの特許出願を行っている。 以上の理由から、スチール製サブストレートを用いる製品が特許侵害となることを均等論を用いて導いた元判決は、誤りである。従って当裁判所は元判決を取り消す。 |
[コメント] |
(a)本件は、特許出願人が明細書に記載していながら敢えてクレーム(請求項)に記載した事項は公衆の用に供された(ささげられた)ものとなり、均等論を用いてこれを救済することができないというMaxwell判決(→Dedicationの法理)が唯一の論点となっています。 外国の事例でありますが、日本の特許出願を元に優先権を主張して米国特許出願をする可能性があることを考えれば、判決の内容を理解しておくことが必要であると考えます。 (b)より具体的に言うと、論点となったのはMaxwell判決の適用範囲です。 本判決以前には、Maxwell判決は開示されかつクレームされていない発明がクレームされた発明と明らかに異なる場合に適用されるべきとする考え方(判決)が存在しました。 例えば明細書に第1実施形態と第2実施形態とがはっきり別々に記載されており、その一方がクレームされていないような場合です。 (c)本事例では特許権者がこの判決を引用しましたが、連邦巡回裁判所はこの主張を退けました。その理由は、次の通りです。 ・特許出願人が一定の発明の主題に関して特許商標庁の審査を回避するために狭いクレームを回避し、他方で、均等論の適用を受けるために当該事項に関して開示しておく、ということを認めると、クレームが保護範囲を公衆に通知する機能を阻害し、法的安定性を害する。 ・審査を回避して均等論を受けるという意図がないのであれば、一つの特許出願で開示しながらクレームし損なった事項については、再発行特許出願や継続出願を行うことにより保護範囲に取り込めるのだから、前述のような取り扱いをしても特許出願人(特許権者)の利益を不当に害することはない、というのです。 (d)実際に本件明細書を見ると、明細書には、“アルミニウムシートが現在好まれるが、スレンレススチールやニッケル合金を用いても良い。”と記載しており、それならば スレンレススチールやニッケル合金をクレームに挙げることは容易にできたと考えられます。特許出願に対する審査を回避して均等論を適用することを最初から意図していたと疑義を持たれても仕方がない状況であります。 (d)米国への特許出願を行うときには、クレームに記載した発明の要素の代替手段を明細書に記載したら、その事項に関して均等論の適用はなくなることを肝に命ずる必要があります。 継続出願などを前提にそうした代替手段を記載する可能性がありますので、特許出願に関して特許査定が出された段階で、他に継続出願をする必要がないのかをよく検討するべきです。 |
[特記事項] |
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