欧州特許事情 技術標準化の宣言をした特許に基づく差止請求
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標準技術/特許出願 |
欧州特許委員会では、このほど米アップルと韓国サムソン電子の特許紛争において、サムソンが所有する標準規格必須特許に関して、広く安価に実施することを認める宣言をしているのにも関わらず、差止請求を起こしたことを問題視する見解を示しました。 一つの製品を製造するために異なる企業体が有する多数の特許を利用しなければならない場合があります。それら特許について全てライセンス交渉をしなければならないとすると非常な労力が必要であるため、技術を標準化し、標準技術の必須特許について広く安価に提供する宣言をするという仕組みがあります。宣言をする側にも標準技術特許を有すると安定的にライセンス料が得られるというメリットがあります。しかしながら、技術標準の宣言が行われているのに、ライセンス交渉が円滑に進行せず、製品の実施に対して差止訴訟が提起されることがあり、そうしたことを欧州特許委員会では問題としています。 日本でも技術標準の宣言の一種であるFRAND宣言(技術標準のために予め定められた条件で取消不能なライセンスを許諾する宣言)が行われている特許に関して損害賠償を請求することの是非が争われた事件がありますが(→平成25年(ネ)第10043号)、欧州では差止請求が問題となっています。 特許出願は独占権付与の意思表示ですが、他人の競業他社の事業を不当に制限したりすると、独占禁止法の問題を生ずる可能性があり、また信義則上の問題を生ずる可能性もあります。 企業が共同で研究を行う「オープンイノベーション」が進む中で、特許権の権利行使がどこまで許されるのかが今後議論となりそうです。 |
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