体系 |
進歩性(考案の) |
用語 |
材料の変更と考案の進歩性 |
意味 |
材料の変更を内容とする考案の進歩性について説明します。
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内容 |
@特許出願による保護対象は、技術的思想の創作である発明全般であるのに対して、実用新案登録による保護対象は、技術的思想の創作である考案のうち物品の形状・構造・組み合わせ(以下「形態」という)に係るものに限定されています。もっとも、先行技術との相違として物品の外観に現れない属性(磁性や弾性)を請求項に織り込むことは認められていますので、そうした属性を有する材料を考案特定事項とすることで、材料のアイディアの間接的な保護を図る余地があります。
A特定の物品に特定種類の材料を採用して従来品と異なる効果を奏したとしても、その効果が材料自体の自明の効果である場合には、特別の事情がない限り、考案の進歩性は否定されます。
例えば昭41(行ケ)104号(戸車用レール事件)では、戸車の金属芯材を覆う被覆材料として従来品に用いられてきたゴムに代えてビニール系樹脂を採用することで、透明又は任意に着色することでレールにこれまでない美観を生じさせたという効果が主張しました。しかしながら、審決(当事者系)では、その効果はビニール自身が有する固有の性質に基づくものであり、ビニールと金属芯材との組み合わせによる効果によってはじめて得られるものではない、と指摘し、進歩性を否定しました。
なお、この事件では、考案品は上述の効果により商業的成功を納めたという主張が行われましたが、これも退けられました。(→商業的成功のケーススタディ(不参酌事例))
A考案の新規性・進歩性が肯定されるのは、次のような場合です。 (イ)公知の材料の未知の性質を利用して物品に新しい効果を付与する場合
「未知の性質」の代わりに“あまり知られていない性質”を用いても考案の進歩性が認められる可能性があります。
(ロ)未知の材料を使用して物品に新たな効果を付与する場合
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留意点 |
考案の進歩性と発明の進歩性との違いというと、条文上、前者は公知の技術的思想から「極めて容易」に創作できたときに否定されるのに対して、後者は「容易に」創作できたときに否定される点が挙げられます。これは特許制度の補完という実用新案制度の趣旨に由来するものですが、現時点では実務上両者の間に殆ど差異がないと言われています。
→考案の進歩性とは
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