体系 |
商標制度に関する事項 |
用語 |
立体商標 |
意味 |
立体商標とは、立体的形状を少なくとも構成要素の一つとする商標をいいます。
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内容 |
@従来、登録対象となる商標(法律上の商標)は、平面的なものと認識されていました。
しかしながら、社会通念としての商標は時代とともに進歩します。商品の包装の外観、或いは商品自体の立体的形状であっても、長年の継続的な使用(或いは大規模な使用)により、需要者の認識と結びついて業務上の信用が化体される事例が知られるようになりました(例えばコカ・コーラの容器など)。
そこで商標法は、平成8年改正により、立体商標を法律上の商標の態様として追加しました。
A立体的形状は、商標の構成要素となります。
立体的形状とは、万年筆の矢羽印のクリップの如く3次元の形状をいいます。
B立体商標は、立体的形状と文字・図形等との結合を含みます。 文字・図形等との結合も立体的だからです。
C立体商標の使用態様として、商品その他の物に標章を「付する」とは、対象物(商品・商品の包装、役務の提供の用に供する物、商品・役務の広告)を標章の形状とすることを含みます。
(イ)「包装」とは、清涼飲料の瓶のように容器を含みます。
D立体商標の取り扱い
(a)その商品の形状(包装の形状を含む)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標は、商標登録されません(商標法第3条第1項第3号)。
(イ)“普通に”の解釈は、厳格に運用することを要すると解釈されます(※1)。指定商品の普通の形状に商標権が乱立すると、競業秩序を損なうからです。
(ロ)“のみ”という文言から識別力なき立体的形状と識別力ある文字等との結合商標は登録対象から除外されません。
パリ条約6条の5Bにいわゆるテルケルマークの登録を拒否できる条件として、“当該商標が識別性を有しない物である場合又は…”という規定があり、全体として識別力を有数る商標を拒絶できる(すなわちテルケルマークも拒絶できる)という法制をとると、パリ条約違反となる可能性があるからです。※2
(b)商品及びその包装の機能確保に不可欠な商品・包装の立体的形状のみからなる商標は商標登録されません(商標法第4条第1項第18号)。
そうしないと、商標権の永続性から商品の生産などが半永久的に独占され、自由競争を阻害するからです。
(a)例えば球状の野球ボールの如く、同種商品に必ず採用し得ない形状が該当します。
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他法との関係 |
立体商標の制度が導入されたことで、特許出願の対象である技術的思想の創作(発明)や意匠登録出願の対象である物品の美的形態の創作(意匠)との間で、独占排他権同士の抵触を生ずる可能性が生じました。
例えばオートバイの立体的形状について商標権が成立しているとともに、その外形に関して特許出願され、特許権が付与されている場合です。
そこで抵触する権利同士の調整規定が置かれています(商標法第29条)。
すなわち、指定商品又は指定役務についての登録商標の使用が商標登録出願の日前に特許出願・実用新案登録出願・意匠出願に係る特許権等と抵触するときには、抵触する部分について抵触する態様により登録商標を使用できません。
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参考図書 |
※1…工業所有権逐条解説 ※2…改正法解説書
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