体系 |
商標制度に関する事項 |
用語 |
業務とは(商標法第3条第1項) |
意味 |
「業務」とは、商標出願の要件である「自己の業務に係る商品又は役務に使用される商標」の一部であり、商標の使用を業として行うことをいいます(商標法第3条第1項柱書)。
なお、「商品又は役務」のことを「商品等」と略称します。
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内容 |
@商標法の本来の保護対象は、商標の使用によって当該商標に蓄積される業務上の信用です。しかしながら、先に商標の使用をして、その後に商標の出願を拒絶されると、商標出願員人のリスクが大きいため、商標法は、現実の使用を要求しない登録主義(商標法第18条)の下で、少なくとも使用の意思を要求する「自己の業務に係る商品又は役務に使用される商標」という要件を課しています。この要件のうち「業務」とは何かを解説します。
A「業務」の意義 (A)「業務」とは、商標の使用を“業として”行うこと、すなわち、反復継続して行うことをいいます。
(a)商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標を使用する権利を専有し(商標法第25条)、ここでの「商標」とは、一定の標章であって、業として商品の生産・証明・譲渡を行う者が当該商品について使用するもの、或いは、業として役務の提供・証明をする者が当該役務について使用するものとされています(商標法第2条第1項)。
(b)商標出願の要件としての「業務」も商標の定義中の「業として」と同義と解釈されます。
(c)具体的には、「業務」とは、ある程度継続して行われることが必要です。
(d)しかしながら、「業務」は、「営業として」行われることを必要としません。
(イ)旧商標法は、営業としての業務に使用されるものを商標と、営業を目的としない業務に使用されるものを標章として区別していましたが(旧26条)、標章は商標とみなすことにしており、両者の取り扱いに実体的な差異はありませんでした。そこで現行法はそうした差異を廃止しました(※1)。
(ロ)従って慈善団体の業務に使用するものも対象となります。 例えば募金に使用する「赤い羽根募金」の如くです。
仮に商標登録されると無関係の団体が当該商標を使用して、その信用にただ乗りすることを阻止できないからです。
(ハ)また協同組合の業務に係る商標も対象となります。 例えば生活用品に使用する「生協/せいきょう」の如くです。
商標登録できないとすると、同一・類似商品に関して類似の商標を他社が使用して事業展開をすることを阻止できなくなるからです。
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他法との関係 |
(a)「業として」という用語は、例えば特許権の効力の規定でも使われます。
(b)しかしながら、特許出願の対象である発明は技術的思想の創作であり、創作そのものに価値があり、当該創作が特許出願を通じて社会に公開され、公衆の文献的利用に委ねられることにより、特許出願人は、保護を受ける代償をいわば前払いで社会に提供しています。
(c)そのため、特許法では、一度限りでの実施も「業として」に該当するとしています。技術分野によっては、例えば建築土木の分野では、他人が一度限り実施したとしても、特許権者に対して大きな不利益を与えるということがあるからです。
(d)他方、商標出願の対象は、自他の商品等の識別のために選択される商標であり、出願を通じて商標が公開されても社会に対する貢献は何もありません。
(d)従って商標法の実質的な保護対象である業務上の信用はある程度継続して使用されることで蓄積されるものであるため、「業として」及び「業務」に関してもある程度使用の継続性が要求されます。もっとも短じ期間でも継続的に使用されれば信用は化体します。
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留意点 |
(参考図書)網野誠著「商標」
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