体系 |
商標制度に関する事項 |
用語 |
専用使用権 |
意味 |
専用使用権とは、設定行為で定めた範囲内において、指定商品又は指定役務(以下「指定商品等」という)を独占排他的に使用できる権利です(商標法第30条、第37条第1号)。
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内容 |
@専用使用権の意義
旧商標法は、商標権を営業と一体の人格権的性質の強い権利と考えていたため、登録商標を他人に使用させようとするときには、商標権を営業とともに譲渡するしかありませんでした。現行法は、商標権の財産的性質を尊重して使用許諾制度を認めており、使用権の種類として専用使用権と通常使用権とを認めています。特許法での専用実施権及び通常使用権とほぼ同じ考え方ですが、保護対象の相違から異なる点もあります。ここでは専用使用権に関して解説します。
A専用使用権の性質
商標権や使用権は無体財産権ですが、権利の成り立ちにおいて民法の物権・債権の仕組みを借用して、制度が成り立っています。
そして民法には、制限物権(物を一定の限られた目的の ために利用する物権)の一種として用益物権という権利があります。
これは、一定の目的のため
他人の土地を使用,収益できる権利です。例えば、他人の土地を借りて,建物などの工作物を所有するために,その土地を使用しているような場合です(地上権)。
専用使用権は、用益物権的な権利であると言われています。
B使用許諾の要件 (a)許諾の主体
専用使用権は、商標権者だけが設定することができます(商標法第30条)。 上述の用益物権的な性質によるものです。
(b)許諾の範囲
(イ)商標権者は、専用権の範囲、すなわち指定商品・指定役務について登録商標を使用する範囲に限って、専用使用権を設定することができます。
下図のように、相互に非類似の指定商品a、指定商品b、指定商品cが存在する場合、各指定商品毎に専用使用権を設定することができます。
しかしながら、同じ指定商品cに重ねて専用使用権を設定することはできません。
禁止権の範囲(登録商標の類似範囲)は、対象外です。この範囲は、商品又は役務(以下「商品等」という)の出所混同を防止するための緩衝地帯であり、商標権者すら他人の権利に抵触しない範囲で事実上の使用ができるに過ぎないからです。
C専用使用権の内容 (a)専用使用権の発生 専用使用権は、設定登録を条件として発生します。
(b)専用使用権の効力
(イ)専用使用権者は、設定行為で定めた範囲で指定商品等について登録商標を使用する権利を専有します(商標法第31条第2項)。
(ロ)また専用使用権者は、設定行為で定めた指定商品等に類似する商品等についての登録商標又は登録商標に類似する商標の使用、或いはそれら指定商品等についての登録商標に類似する商標の使用を、他人が行うことを禁止できます。
下図のように指定商品cに専用使用権を設定した場合には、その周りを囲むように禁止権の効力が及びます。
(ロ)専用使用権を設定した範囲では、商標権者自身も商標を使用することができません。
(c)専用使用権の移転
専用使用権は、商標権者の承諾を得た場合、及び、一般承継の場合に限り、移転することができます(商標法第30条第3項)。
(d)専用使用権の消滅 専用使用権は、商標権者との契約の解消により或いは商標権の消滅により、消滅します。
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他法との関係 |
特許出願人は、設定登録を受ける前の段階で、当該特許出願に係る発明について仮専用実施権を設定することができます。特許出願中の段階でのライセンシーの保護のためです。
他方、商標法には商標の出願人が仮専用使用権を設定するという制度がありません。商標は選択物であり、他人の出願中の商標のライセンスを受けるぐらいなら、先に自分が商標の出願をすれば足りるからです。
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留意点 |
(参考図83)
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