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@商標法第4条第1項第7号の趣旨
商標法は、商品又は役務(以下「商品等」という)の出所混同を防止することで、商標に蓄積される業務上の信用を保護するため、登録主義(商標法第18条)の下で、商標権(商標法第25条、第37条第1号)を付与するものです。この趣旨を達成するため、その業務上の信用を蓄積する前提として、商標としての機能を営むこと(商品等の識別力)を、商標の一般的適格性として要求します。
しかしながら、商標の機能を発揮するものでも、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標を一私人に登録すると、法律の最終目的である公共の福祉に反します。
そこで公益的不登録事由として商標法第4条第1項第7号が規定されました。
A商標法第4条第1項第7号の適用要件
(a)公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのあることです。
(b)「公の秩序」とは、国家の一般的な利益といいます。
例えば特定の国家・国民を侮辱する如き商標、例えば「征○丸」(○の部分は特定の国家の略称)の如きは本号に該当する可能性があります。かような商標を登録することで日本国が国際的な信義に反する国と評価されるからです。
(c)「善良の風俗」とは、社会の一般的な道徳観念をいいます。
例えば過激なスローガン、羞恥心を生じさせるような図形が該当します。
(d)商標の構成自体がそうでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合も含まれるものと解釈されます。
(e)上述の「一般的な利益」及び「一般的な道徳観念」の「一般的」とは、国民全体の利益・道徳を問題とする意味である。国民の一部、たとえばキリスト教徒にとって神聖な「マリア」という文言を要部とする商標であっても必ずしも本号に該当しないとした例があります。
(f)音商標が本号に該当するか否かは、音に係る歴史的背景、社会的影響等、多面的な視野から判断するものとします。(※1) (例)
音商標が国歌(外国のものを含む)を想起させる場合。
B商標法第4条第1項第7号の法上の取り扱い
(a)同号に該当するときには、商標出願の拒絶、商標登録の無効・異議申立の理由となります。
本号は、公益的不登録事由であるため、除斥期間の適用がなく、後発的無効理由となります。 →後発的無効事由とは
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