体系 |
商標制度に関する事項 |
用語 |
商標法第4条第1項第15号とは(具体的出所混同防止) |
意味 |
商標法第4条第1項第15号は、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標を登録しない旨を定めており、商標法第4条第1項第10〜12号の総括条項です。
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内容 |
@商標法第4条第1項第15号の趣旨
商標法は、自他商品・自他役務の識別力を商標の普遍的登録要件として(商標法第3条第1項)、商標の識別機能を担保するために、取引の経験則上で他人の商標の類似範囲を商品又は役務(以下「商品等」という)の出所混同の範囲とみなして、登録対象から除外しています(商標法第4条第1項第10〜12号)。
これらの規定は、一般的出所混同の防止の規定と呼ばれることがあります。
しかしながら、現実の出所の混同の範囲は、取引の実情に左右されて狭くも広くもなるため、上記の類似範囲を超えて生ずる場合があります。
そこで上述の取引の実情に応じて具体的出所混同を防止する本号が設けられました。
A商標法第4条第1項第15号の適用要件
(a)他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがあること。
(イ)「他人」とは、商標の出願人以外の者をいいます。同一人であれば出所混同を生じないからです。
(ロ)「業務」とは、一定の目的の下で継続して行うものをいい、営利性は問われません。
・「業務」というときは、現存のものに限らず、事業廃止後間もないものも含まれると解されます。
事業が廃止されても一定期間は商品が市場を流通しており、現実の出所混同を生じているからです。
(ハ)「混同」とは、需要者が商品等の出所を誤って認識することをいい、本号では具体的出所混同をいいます。 →具体的出所混同とは
(ニ)「おそれ」の有無は、商標の構成を考慮するのは当然として、この商標の構成のみならず、他人の業務形態・企業規模・他人の商標の著名度・創造商標か否かにより判断するべきものです。
(b)商標法第4条第1項第10〜12、14号に該当しないこと。 規定の重複適用を回避するためです。
B商標法第4条第1項第15号の法上の取り扱い
(a)同号に該当するときには、商標出願の拒絶、商標登録の無効・異議申立の理由となります。
本号は、私益的不登録事由であるため、除斥期間の適用があり(不正の目的で登録を受けた場合を除く)、他方、後発的無効理由となりません。
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留意点 |
商標出願の対象が商号商標であるときには、商号商標の一体性を考慮するべきです。 →商標法第4条第1項第15号のケーススタディ(商号商標)
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