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@縮小解釈の意義
(a)法律解釈の基本は、文理解釈であり、従って条文中の用語の意味は、その用語が有する通常の意味に解釈するのが原則であります。
(b)しかしながら、その法律体系の意義から(例えば商標法の目的や商標出願の対象の性質から)、条文中の用語の意味を狭めて解釈することが妥当な場合があります。
こうした場合に縮小解釈が行われます。
(c)こうした解釈は、条理解釈の一種です。 →条理解釈とは
A縮小解釈の内容
(a)まず比較対象として、特許法第68条には「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。」と規定されています。
この規定中の「業として」とは、特許法上は、広く事業としての実施であり、反復継続性を要しない、一度限りの実施でも該当すると解釈されています。
(b)他方、商標法第2条第1項には、「『商標』とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
二
業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)」 と規定されています。
ここでの“業として”とは“一定の目的の下に反復継続して行う行為として”という意味と理解されています。
特許出願の対象である発明は、技術的思想の創作であり、それ自体が創作物としての価値を有するのに対して、商標出願の対象である商標は、自他商品・自他役務の識別のために選択されたものであり、それ自体に価値はありません。商標法の本当の保護対象は、商標の上に化体された業務上の信用であり、それは、事業者が自己の業務に関して繰り返し商標を使用することで蓄積されるものであるために、商標法では“業として”に反復継続性が必要であると限定的に解釈されているのです。
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