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@三桝事件の意義
商標の類否判断で難しいのは、商標の分離観察が認められる場合があるからです。その分離観察も、商標の構成を、要部+付記的部分というように分離し、要部のみから称呼や観念が生ずるというだけであれば、まだよいのですが、場合によっては、“要部+要部”という形に分離され、それぞれに称呼や観念が生ずる場合があります。
そうした考え方が判示された判例として三桝事件を紹介します。
A三桝事件の意義
事件番号:昭和34年(オ)第856号(最高裁) 本願商標・引用商標:“亀甲及び三桝の図形を含む商標”=“三桝の図形” (類似)
指定商品:菓子及び麺麭 事件の種類:商標出願拒絶審決請求取消請求事件(2審判決(請求棄却)を棄却)
いわゆる“三桝”は、大中小の正方形(桝)を同心状に(すなわち、小を中が、中を大が囲むように)描いたもの、亀甲は、大中小の六角形の図形を同心状に描いたものです。前者は歌舞伎の成田屋の紋として有名です。
引用商標は、立方体の隣り合う3面に三桝の紋を描き、それら3面を斜めから見た図柄の商標です(第九〇、六二一号及び第九一、一五四号)。
商標出願人の商標は、同様の図柄を、元祖の文字を三重の六角形(亀甲)で囲んだ図形の両側に描いてなります。
裁判所は、3個の正方形を、小なるものを大なるものの内部に正しく位置するように描いた図形を、“三桝”と称することは顕著な事実であり(例えば江戸歌舞伎の宗家の紋章として有名である)、よって引用商標の構成から“三桝”の称呼及び観念が生ずることは明らかである、と判断しました。
→裁判所に顕著な事実とは)、
そして、本願商標の構成のうち元祖の文字を囲む三重の六角形の図形が“亀甲”の称呼及び概念を生ずるとしても、それとは別に、その両側に置かれた図形が三桝の称呼及び観念を生ずることは否定できないと判示しました。
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