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 商標に関する専門用語
  

 No:  122   

商標権移転登録請求が認められなかった事例/商標出願

 
用語

商標権移転登録の請求が認められなかった事例(ライセンス契約の終了による)

意味  外国商標権者にロイリティを支払って商標(元の商標を変形したものを含む)を使用し、それら商標を自己の名義で商標出願したライセンシーは、ライセンス契約の終了後には、ライセンシーからそれらの商標権の移転登録を請求される場合があります。
 ここではそうした請求が認められる範囲の限界を考察します。


内容 @移転登録の意義

 我国では、商標のライセンス契約というと、登録主義の下で設定される商標権(商標出願をすることで使用の意思表示をした者に対して付与される商標権)に基づいて専用使用権を設定し、通常使用権を許諾することを指します。

 しかしながら、契約自由の原則により、どのような契約内容とするのかは基本的に自由ですから、外国の商標主が所有する商標を、当該商標主から供給された商品について、ライセンス料を支払って日本国内で使用することができる旨の契約を締結することも可能です。ライセンシーの側としては、本来の商標所有者から正規のルートで購入され、その商標を付した商品であることを需要者にアピールし、事業を有利に展開することができるという利点があります。

 こうした場合に、同一・類似の商標が第三者により商標出願されることを想定して、ライセンシーの名義でライセンサーの商標(又は変形物)を商標出願することがあり、この場合にライセンス契約の終了後のそれらの商標の帰属を巡って問題を生ずる可能性があります。

 なぜなら、商標の使用により商標権が発生するという使用主義を採用する国(例えばアメリカ)の商標主は、自分達の管理下で使用された商標の権利は自分達のものと考えることが少なくないからです。

 権利の帰属に関してライセンス契約ではっきり明記されていればよいのですが、そうでない場合には、日本人であるライセンシー(商標権者)と思惑が異なり、紛争を生ずる可能性があります。

A移転登録の事例の内容

[事件の表示]昭和55年(ネ)第2053号・2081号(商標権移転登録請求・控訴)

[判決の言い渡し日]昭和13年10月27日

[移転登録の対象となった商標事件]

(1)Troy Bros  (筆記体風の書体)

(2)図形商標(喫煙用パイプを図案化したもの)

(3)SUNFAIR

(4)CASTWAY

[事件の経緯]

(a)原告は、“Troy Sportswear Company Inc”という名称でスポーツウェアなどの衣料の製造・販売を行う米国企業です。

(b)被告は、その代表者が原告と提携してその商標のブランド力を利用して日本国内で衣料を販売するために設立する会社です。

(c)原告と被告とが締結したライセンス契約には、

・原告は被告が“原告の商標又はこれに類似する商標あるいはその変形物”を使用することを承諾する、

・被告が使用する商標に関しては被告名義で商標出願し、登録手続をする、

・ライセンス契約が終了したときには、被告は原告から許諾を受けて使用したものの使用を停止する
 という条項が含まれていました。

(d)本契約締結後に被告は“Troy Bros”及びパイプマークを商品に使用し、かつ原告から正式にライセンス契約を受けていることを積極的に宣伝して、業績を伸ばしていましたが、その後に被告の名義で商標出願され、設定登録された両商標の権利の帰属を巡って原告との間に紛争が生じました。原告はライセンス契約の解除を被告に通告し、本件訴訟に至りました。

[各商標の説明]

(a)“Troy Bros”は“トロイの兄弟会社”という意味の造語商標です。第三者が「トロイ」に関して商標登録を受けていたために被告が考案して商標です。

 パイプマークは、被告が考案した商標です。当時我国でワンポイントマークが流行していたためです。

 被告の代表者は、“Troy Bros”とともにパイプマークを新会社(被告会社)で使用したいと原告に申し入れました。原告代表者は、当時の米国で喫煙に対して批判的風潮が広がっていたために、その提案に直ちに賛同しませんでしたが、結果として受け入れました。

 “Troy Bros”に関しては移転登録請求が認容されています。これに関しては次を参照して下さい。
商標権移転登録の請求が認められた事例(ライセンス契約の終了による)
 ここではパイプマークに関してのみ取り扱います。

[原告の主張(要旨)]

 不可分に使用されてきた“Troy Bros”及びパイプマークとを原告と被告会社とに分断して使用させるのは、商標の出所表示力を信ずる一般公衆の立場を考慮すれば妥当性を欠く。

 従って前者が原告に帰属するなら、後者も原告に帰属するべきである。

[裁判所の判断]

(a)本件契約中の原告の商標・これに類似する商標・変形物の意義は条項中明らかではなく、契約全体の趣旨、契約締結に至る動機、契約当事者双方の言動を考慮して定めるべきである。

(b)そうすると、“これに類似するものないしはその変形物”とは、原告の商標を一部に利用したり、その文字、活字、形状を変えるなどして生成した観念的、イメージ的に同種又は類似の商標をいうものと解するのが相当である。

(c)パイプマークに関しては、

・商標の通商上の使用を基礎として商標権の登録を認めるアメリカ合衆国で原告はパイプマーク又はこれに類似する商標・変形物を一切使用していないこと

・原告は被告会社がパイプマークを使用することに批判的であったこと

・パイプマークはもともと無名であり、被告の営業努力により次第に有名になったこと

 を考慮すると、当該パイプマークは原告の商標・これに類似する商標・変形物には含まれないと解釈するべきであり、移転登録の請求は認められない。


留意点

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