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 商標に関する専門用語
  

 No:  124   

禁反言による信義則CS2(商標)/商標出願

 
体系 禁反言
用語

禁反言による信義則のケーススタディ2(商標の場合)/KII事件

意味  信義則とは、信義かつ忠実に行動するべき原則を言い、
 禁反言の原則とは、一般に甲が乙に対して何らかの意思表示を行い、乙がその意思表示に応じて行動をとった場合に、後になって甲が前記意思表示と矛盾する行動をとることができないという原則を言います。


内容 @禁反言による信義則の意義

 商標出願の審査や異議申立の段階で商標権の成立・維持のために商標出願人又は権利者がある主張を行い、それを審査官や審判官が認めて商標権が成立し、或いは維持されたときには、その主張を否定するような権利の主張をすることは、信義則に反し許されないというべきです。商標出願の場合には、商標の構成自体は出願書類により決定されてしまいますが、その構成から生ずる称呼や観念など類似判断の基礎となる事柄に関して禁反言による信義則が問題になります。

A禁反言による信義則の事例の内容

事件の表示:平成5年(ワ)第6949号

事件の種類:商標権差止請求事件

本願商標:図形商標(Kに似た絵柄とUに似た絵柄とが結合したもの

(参考図108)

zu


登録番号:2521750(商公平2−8770)

問題の意思表示が行われた場面:出願公告に対する異議申立に対する答弁

意思表示の内容:本件商標は構成文字を明確に判断できない一種の図形商標であり、単にKとUとからなる極めて簡単かつありふれた商標ではない。

意思表示に反する主張:本件商標は全体観察すると外観上は「K」と「II」とを組み合わせた一体的標章であるから、普通の書体で記載された被告商標「KU」と類似する。

事件の経緯:本件商標出願は、平成2年1月31日に出願公告され、これに対して、次の理由で異議申立がありました。

・本件商標は、アルファベットの「K」とローマ数字の「U」をくっつけて構成したものであるから、極めて簡単で、かつ、ありふれた商標(商標法3条1項5号違反)である。

・本件商標は、片仮名で「ケイツウ」と横書きしてなる構成の被告の登録商標(一八六三二三五号)と類似し指定商品も抵触するから、商標法4条1項11号に該当する。

 これに対して原告である商標出願人甲は、次のように反論していました。

 “本件商標はモノグラムであって構成文字を明確に判断することはできないもので一種の図形よりなる商標であり、「K」と「U」の極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなるものではなく、「ケイツウ」の称呼も生じない”

 上記の主張が認められ、異議申立は認められずに、商標権が成立しました。

 この後に、甲は、被告による商標「KU」の使用が商標権の侵害であるとして提訴しました。

裁判所の判断:

(a)本件商標を虚心にみると、本件商標は、

(イ)左辺が太く、右辺が細く、上辺、下辺がより細い縦長の長方形と

(ロ)この左側に、長方形の左辺を一辺とし、右上から左下へ向かう細線の斜上辺と右下から左上へ向かうより細い線の斜下辺とからなる三角形と

(ハ)この三角形が接し、その左方にやや離れて、右側が細く、左側が太い二本の縦の平行線を
 を含み、

(ニ)前記三角形の斜上辺の左下方への延長が、二本の縦の平行線の上下の中央部に達している

 という一個の特殊な図形とみるべきである。

(b)なるほど、前記図形の平行線がローマ字“U”であり、その横にアルファベットKが接合したものという)説明を予め受ければ、そのような構成の商標と判別できないわけではない。

(c)しかしながら、そうした主張をすることは、法の一般原則としての信義誠実の原則に反し許されない。

(d)すなわち、原告は、異議申立人が本件商標は「K」と「U」をくっつけた構成であると主張したのに対し、異議答弁書において前述の反論を行い、その反論が認められ、本件商標は、アルファベットの一文字「K」とローマ数字の「U」とを普通の態様で表したものとは認識しえない程度に、特異に構成されているから、原告の創作に係る特殊な図形と判断されて異議申立ては理由なしとされ、本件商標を登録する旨の査定がされたからである。
たことは、前記一5認定のとおりである。

(e)商標出願登録の過程においては、本件商標はモノグラムであって一種の図形よりなる商標であるとして、それを構成する「K」、「U」の文字をくっつけたものであることを実質上否定する主張をして、それが認められて本件商標権を取得した原告が、本件訴訟においては掌を返すように本件商標は外観上「K」と「U」の接合体と看取できると主張して、被告標章はこれに類似する旨主張することは信義誠実の原則に反し許されない。

[コメント]

 この事件での商標の類否はかなり際どく、それだけに禁反言による信義則の観点が類否判断において大きなウェートを占めていたと推察されます。

 文字を図案化した商標から特定の意義を読み取れるかが微妙である場合、禁反言の原則が適用された事例は他にもあります。
禁反言のケーススタディ2−1(商標の類似性・図形)/Lavé事件

 なお、審査における出願人の主張は、出願人から権利を譲り受けた者の権利行使にも影響を与えますので、不用意な主張はするべきではありません。
禁反言による信義則のケーススタディ3(商標の場合)/BeaR事件


留意点

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