体系 |
禁反言 |
用語 |
禁反言のケーススタディ2−1(商標の類似性・図形)/Lavé事件 |
意味 |
禁反言の原則とは、一般に甲が乙に対して何らかの意思表示を行い、乙がその意思表示に応じて行動をとった場合に、後になって甲が前記意思表示と矛盾する行動をとることができないという原則を言います。
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内容 |
@禁反言の原則の意義
禁反言の原則はフェアプレイの精神の表れであり、例えば商標出願の手続において審査官を錯誤に導き、審査官の理解と全然異なる権利内容に関して権利の行使をしようとする場合には、禁反言に違反するおそれがあります。ここではそうした事例を紹介します。
A禁反言の原則の事例の内容
事件の表示:昭和46年(ワ)第4521号
事件の種類:商標権侵害禁止等請求事件
問題の意思表示が行われた場面:商標出願の手続
本願商標:Lavéの筆記体を変形した図形商標(aの部分がoにも見えるとともにアクサンテギユ’が定位置からずれているもの)
意思表示の内容:自らの登録商標(Lavéの筆記体)に類似する連合商標として出願した。 →連合商標制度とは
意思表示に反する主張:本願商標は“Love”の筆記体であり、“’”は言語上の意味がない異常な付加物に過ぎない。
事件の経緯:
原告は、昭和三四年九月二八日に既登録商標(第四七六〇八七号)の登録を取得し、その後にこの商標の連合商標として本件商標の登録(第五四二四五〇号)を取得し、
“LOVE”商標をしていた被告が本件商標の商標権を侵害しているとして提訴します。
裁判所の判断:本件登録商標は前記の如く、既登録商標の適合商標として登録を受ける必要上、連合すべき商標に類似せしめるため殊更異常な附加物まで附し、現代用語には普通みられないような異常な外形の文字商標を作出して出願したものと解するの外なきものであって、出願人たる原告がその登録商標につき、登録後に至り、右異常な附加物は意味のない単なる装飾のたぐいであるから、これを度外視した表示部分がその主要部である旨主張することは、出願時における出願人の行動と矛盾するもので、禁反言の原則に悖戻するものというべきである。
[コメント]既登録商標の第2文字は“a”としか読めず、本件商標の第2文字は“a”とも“o”とも読めます。
また既登録商標の第4文字は“é”としか読めませんが、本件商標の第4文字は“é”と読むには“’”と“e”とが離れすぎています。結局、商標出願の段階では“Lavé”(ラベ)商標であると思わせておいて、権利行使の段階で“Love”(ラブ)商標として利用しているとしか理解できません。従って裁判所が禁反言に反すると判断したことは妥当と考えます。
なお、禁反言の原則は、審査での主張だけでなく、無効審判の審理での主張に関しても適用される場合があります。
→禁反言のケーススタディ2-2(商標の類似性・無効審判)/Raggazza事件
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留意点 |
(参考図109)
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