内容 |
①予備的判断の意義
(a)裁判や審判において、“△△の事実があるとしても、他の事実を考慮すると、◇◇であることが予備的に認められる。従って、この法律行為は無効である(或いは、当該処分は取り消されるべきである)”というような判断が示されることがあります。
この場合の前者を主位的判断と言い、これに対して後者を予備的判断と言います。 →主位的判断とは
(b)例えば拒絶査定不服審判において、特許出願人の発明A+B+Cに対して、引用例A+B+C’が存在しているとき、主位的判断として、要件CとC’とが実質的に同一であるとして新規性欠如で判断し、予備的判断として、たとえ要件CとC’とが相違するとしても、技術常識を参酌すれば、引用例から当該発明に容易に相当できるので、いずれにしても特許出願の拒絶査定に誤りはないと結論するような場合です。
審判官としては、C≒C’という認定にある程度の心証を得ているが、引用例の記載に曖昧さなどからそれが100%正しいとも言えないというような場合が想定されます。
(c)また特許出願に係る発明と引用発明とが同一ではなく、進歩性の判断になっているば場合でも、その発明の構成要件の一部と引用例に開示された技術的要素とが同一であるときと同一でないときとを想定して、主位的判断と予備的判断とを行うことが想定されます。
②予備的判断の内容
(a)事例1(平成6年(行ケ)第273号)
[事件の種類]拒絶審決取消請求事件(請求棄却)
[特許出願に対する審決の内容]
「なお、特許請求の範囲の記載からは明確ではないが、本願発明において、バッファ回路が他の制御信号を用いることなく行デコーダ回路の出力で制御されるものであるとしても、このような点についても、例えば、「株式会社工業調査会発行 電子材料vol.18No9 P6-7」(本訴における甲第7号証)に記載されているように、当該技術分野において周知の事項であり、格別なものとはいえないことを付記する。」
[原告(特許出願人)の主張]
「取消事由2(予備的判断の誤り)
審決は、本願発明において、バッファ回路が他の制御信号を用いることなく行デコーダ回路の出力で制御されるものであるとしても、その点は、例えば甲第7号証に記載されているように周知の事項である旨判断するが、誤りである。
甲第7号証には、甲第7号証に記載された周知事項を2つのデコーダ回路に適用する際に本願の特許請求の範囲に記載されているような構成を採用することが可能である旨を示唆する記載は存在しないからである。」
[裁判所の判断]
審決には、本願発明と引用発明1とは、選択動作を最終的に制御する信号は前記第1のデコーダ回路と前記第2のデコーダ回路のうち出力の変化が遅い方の出力信号である点で一致すると認定した点に誤りがあるが(取消事由1)、その点は、審決が予備的に判断したとおり、容易に推考できる点であると認められ(取消事由2)、相違点についての判断(取消事由3)及び効果についての判断(取消事由4)にも誤りはないから、結局、審決には違法がないと認められる。
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