体系 |
権利内容 |
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外的付加のケーススタディ1とは(利用発明に関して) |
意味 |
外部付加とは 利用発明において、先願(先行する特許出願・実用新案登録出願等)に係る他人の特許発明に対して、当該発明の構成要素と別個の新たな要素を付加することを言います。
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内容 |
@外部付加の意義
先願に係る他人の特許発明の構成に他の構成要素を組み込んでも、技術的思想の一体性を損なわない限り、外的付加に過ぎず、他の構成要素を組み込んだ発明を実施すれば、他人の特許発明を侵害することになります。他方、他の構成要素を組み込むことで、先願の特許発明の作用効果が失われてしまうような場合には、一体性が損なわれていますので、実施しても権利侵害にはなりません。
ここでは、実施者が自己の権利を有するか否かは、ひとまず置いて、形式的に外的付加の形の係争物(物の発明)の実施が権利侵害となるか否かをケーススタディします。
A事例1
[事件番号]昭和37年(ワ)第6578号
[事件の種類]実用新案権侵害差止請求事件(実用新案登録第五一七、三一〇号)
[考案の名称]温床用覆布
[先願考案の構成]
“温床用覆布の横幅の二分の一以上の幅を持つた塩化ビニール樹脂、ポリエチレン樹脂等よりなる一つの皮膜体の一方に温床用覆布全体の横幅の二分の一以下の幅を持つた化学繊維または天然繊維よりなる一つの網目体を連着してなる温床用覆布の構造”
[先願考案の作用効果]
本件登録実用新案は、従来の皮膜体または網目体のみからなる温床用覆布と異なり、天然繊維あるいは化学繊維の網目体が熱の不良導体であり、対流を生じさせない膜を張つたのと同じ効果を生ずるから、必要以上に風を通すことがなく、また熱を一方的に温床内に貯めることもない。
その結果、温床内に風を入れたり、温床内の植物に日光の直射を与えるために、一々覆布を取り外す必要がない。
[後願発明の構成]
係争物(本件温床用覆布)の構成は次の通りである。
(1)ビニール膜1、2の皮膜体と化学繊維製の寒冷紗からなるネットを連着したこと。
(2) 皮膜体の横幅は合わせて約百七十糎、ネットの横幅は約十五糎であること。
[原告の主張]
本件温床用覆布のネット3は、ビニール膜1と2の間に介在し、温床用覆布の中央に位置しており、その結果、ネット3を通して温床内に水や薬剤を散布することが可能であるが、ネット(網目体)が温床用覆布の中央にあるか端部にあるかは、本件登録実用新案の要部ではなく、右作用効果は本件登録実用新案の要部に属しない構造がもたらす附随的なものにすぎない。
[被告の主張]
本件温床用覆布においては、ネット3がその中央に位置している結果、温床がいかなる方向に設営されるかにかかわらず、広く覆布として使用することができ、またネット3を通して水や薬剤を温床内に散布することができる等の作用効果がある反面、本件登録実用新案が網目体を南側に向けて使用することによって得ることを期待した作用効果は認められない。
[裁判所の見解]本件登録実用新案と本件温床用覆布とを対比するに、本件温床用覆布は、覆布全体の横幅の二分の一以下の幅を持つた二つのビニール膜1および2と一つのネット3の三部材よりなることおよびネット3がビニール膜1および2の間に介在し、温床用覆布全体の中央に位置しており、本件登録実用新案におけるように網目体が温床用覆布の端部にない点において本件考案と構成を異にし、またその結果、本件考案の有する前記の作用効果を期待することができないことが認められるので、両者はその構造および作用効果を異にするものといわざるをえない。
[コメント]
先願の物の発明(A+B)に対して後願発明(A+B+C)に特許が付与され、一見したところ、利用関係が成立しているようであっても、例えば要素Aと要素Bとの間に要素Cが介在する結果として、元の発明(A+B)の作用効果が失われてしまうような場合には、利用発明ではありません。要素Aと要素Bとが一定の作用効果を奏するように配置されているという関係が重要であり、その関係を取り入れていないために、発明の一体性が損なわれているからです。
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留意点 |
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