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①約因の意義
(a)約因は、契約を結ぶための原因となった事項であり、例えばgive and
takeの関係の場合には、当事者が相手に与え、かつ自分が受け取る何かです。
もう少し具体的にいうと、約因があるとは
「Considerationがある」とは、
・当事者Aが受け取る利益(benefit)と当事者Bが受ける不利益(detriment)の一方または双方がある。
・当事者Bが受け取る利益と当事者Aが受ける不利益の一方または双方がある
・これら利益と不利益とが交換される約束がなされている
ことをいうとされています。
(b)約因は、契約が有効で拘束力のあるものであるために必要です。
(c)約因は、日本の法律にない概念ですので、理解しにくいと思います。そこで米国の判例を例にとって約因の概念を解説します。
Allegheny College v. National Chautaugua Country Bank of Jameson,
246 N.Y. 369, 159 N.E. 173 (1927)
は約因の有無が争われた事例です。
Mary Y.
Johnson という人物が大学(Allegheny
College)に彼女の死後45,000ドルを寄贈することを約束していました。しかしながら、彼女の遺言執行者は、それだけ払うのは勿体ないと思ったのか、1,000ドルを寄贈したのみで残りの寄贈を拒絶しました。
そこで大学側が彼女の遺言執行者を訴えた。
一見すると、この事案は単なる贈与であって、約因がないように思えます。
しかしながら、大学は、45,000ドルの寄贈を受ける代わりに、大学は彼女の名前を財団の名前に組み入れることを約束したので、約因があると主張しました。
そこで裁判所は、この事実をもって大学の側が不利益(detriment)を受け入れたものと認定し、considerationありと判断しました。
(d)約因(consideration)の記載の表現の一例を挙げます。
・NOW THEREFORE,
in
consideration of the promise and mutual covenants herein-after set
forth, the parties hereto agree as follows:
そこで,以下に定める約束と相互の合意を約因とし て,両当事者は以下の通り合意する。
②約因の内容
(a)特許出願の譲渡証では、約因の存在を示すために、次のような記載の仕方が一つの定型となっています。
In
consideration of the sum of one dollar ($1.00) and other good and
valuable consideration paid to the undersigned, each undersigned
agrees to assign, and hereby does assign to A …the entire right in
the invention, in all patent application known as…
下記の署名者は、署名者に支払われる1ドル及びそれ以外の善良約因及び有価約因を考慮して、Aに対して…で知られる発明、全ての特許出願…に関する権利を、譲渡する。
→善良約因(good
consideration)とは →有価約因(valuable
consideration)とは
(b)日本人には“1ドル”という言葉が奇妙に思えますが、裁判所は、特許出願等の権利と1ドルとが釣り合っているかどうかは全く判断しないので、このように約因が記載されている限り、この契約が拘束力を有することが確実となります。
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